古峰文三「空母キラーのハイパー艦爆『彗星』開発史」
劣勢な日本海軍が、アメリカ空母を先制攻撃で発着不能にするべく求めた、高性能艦爆が彗星。ドイツからの技術輸入を狙ったが、再軍備で忙しく、自力開発に。しかし、難航する開発のストップギャップを埋めるのが、九九艦爆だった、と。
エンジンはドイツのDB600を導入し、空技廠が開発した。まだ、アウトレンジ指向直前、層流翼一辺倒直前と過渡的な特徴が強い。ラジエターは、ドイツ製He118から改良しつつ、機首のエンジン架装は影響を受けている。着陸脚は電動とされたが、電気技術を教育された整備員が少なく、後々問題になった。しかし、エンジンの大量生産が遅れて、実戦投入はさらに遅れた。
高速性能から、最初は艦上偵察機として使われた。液冷タイプは、夜間爆撃や夜間戦闘機用途で生産され、本来の爆撃任務には、空冷エンジンを載せたタイプが投入。特攻専用改造タイプも生産されている。
古峰文三「『彗星』の心臓『アツタ』&『金星』発動機」
彗星のエンジンのお話。
ドイツの液冷エンジンの特徴、倒立V型は、WW1後の航空禁止で技術開発が微妙に遅れたことから、減速ギアの導入などで時代遅れになりつつあったにもかかわらず、ドイツの主力となった。あとは、DB600、DB601のライセンス購入をめぐるすったもんだ。ダイムラーベンツは日本への技術流出を警戒したとか、601開発時のライセンスをめぐる日本側とDB社の見解の相違とか。第二次大戦の勃発で、慌てて、ライセンスと現物が購入、日本に発送された。
陸軍と海軍の、DB601系チューンアップの方法の違いも興味深い。野心的な性能向上を狙って、結局、現物が一つも出なかった陸軍のハ一四〇。それに対して、アツタ三二型は、やや保守的なチューンで、きちんとアウトプットに成功。
しかし、液冷エンジンは、複雑で生産性が低く、艦載機のエンジンとしてはともかく、大戦末期、基地航空隊の陸爆としての大量生産には向かなかった。そこで、空冷エンジンで安定した性能を発揮する金星に換装。性能は低下したが、燃費は改善し、航続距離は伸びた。
土井津たけお「『彗星』にまつわる七つのクエスチョン」
最初から、偵察機転用を折りこんで開発された。一応、爆撃任務も兼用で採用、「二式陸偵」は、地上部隊での運用に便利な行政的な都合であった。「彗星」の命名は、陸上爆撃機としての大量配備という、運用の変化を反映したものであった。本当な20ミリ機銃を装備したかった。着陸速度が速すぎたため、隼鷹クラスの空母では運用困難だった。容積の関係で機上レーダーの搭載ができなかった。搭載爆弾は250キロだった。
山名正夫「『彗星』設計者の回想」
エンジンの気化器の調子が悪く、木更津でのテストが長引き、滞在資金に苦しんだエピソードが印象的。
三茶甲士「世界の『水陸両用装甲車』ラインナップ」
AAV-7はなんだかんだ言って、バランスのいい車両だよなあ。水上でも相応の動けて、陸上でもイラク戦争でバグダッドまで行っているわけだし。とはいえ、図体のでかさ、水上速度の遅さは現代戦に対応できなくなっている、と。
次世代の水陸両用車両では、アメリカのEFV、日本のMAV、中国の05式水陸両用戦闘車などが開発されている。
しかし、水上で50キロ出せるようになっても、ミサイル装備の部隊がいたら、普通に撃破されそう。EFVは、水上速度を追求したためか、非常に高価、さらに、防御力の不安から、開発中止に。次世代水陸両用車両は、装輪で水上速度が遅いACV1.1に。
三菱のMAVは、新型のコンパクトなエンジンで、高性能を狙う方向性か。中国の05式も、滑空走行で高速を狙っている。けど、いろいろ控え目にしている、と。
ロシアは、軽戦車、兵員輸送車などに浮航機能を備えている、と。ここいらは伝統的に、そうなってるよなあ。
宮永忠将「フランス戦艦物語第3回:ド級戦艦建造計画3」
海軍軍縮条約で、完全に脇に追いやられたフランス。さらに、新型戦艦の整備が難しい財政状況。仮想的をイタリアに定めた戦艦整備に邁進。旧式戦艦を改装して、しのぐ。
イタリアとフランスの互いに重巡洋艦の建艦競争に。さらに、重巡を中心に新時代の艦隊整備を目論んでいるとみられるイタリア相手に、重巡を完封する戦艦の建造を狙う、と。