『丸』2020年03月号

丸 2020年 03 月号 [雑誌]

丸 2020年 03 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 雑誌
 特集は、空母飛龍。
 カラー写真のポーランド空軍Su-22、戦車射撃競技会、モノクロ写真のラバウル陸攻あたりが良いなあ。

勝目純也「航空母艦『飛龍』建造計画とメカニズム」

 飛龍の建造経緯や特徴など。
 巡洋艦部隊である第二艦隊を支援する高速空母として構想され、軍縮条約の枠から1万トン強で計画されたが、それでは無理ということで18000トンクラスの艦に。条約の枠組みや友鶴事件・第四艦隊事件の対策で、建造時期があき、艦容に差が出ている。
 当時の日本の技術力では、鋼材の品質が安定せず、強度不足になるため、蒼龍の電気溶接から鋲接に変更。あとは、航空本部の要求で左舷に置かれた艦橋が、実際には、気流の不良が顕著で、以後右舷で煙突とまとめることになる。

古峰文三「空母ハンター『飛龍』の航空システム評価」

 第二艦隊の巡洋艦部隊と行動し、主力部隊の接触前に艦爆隊を発進、飛行甲板にダメージを与え、戦術的存在意義をなくすことを目的に構想された蒼龍と飛龍。軍縮条約で全般的な戦力劣勢を強いられた日本海軍は、そのような戦術を想定していた。
 飛龍は、蒼龍の運用成績をもとに、部分的に改善した艦。
 飛龍の飛行甲板は、ちょっと幅広になっているが、艦橋部分での幅は変わらず、実用的にはまったく差がないものだった。
 左舷中央に設置された艦橋は、前から着艦する逆着艦がやりやすいようにと考えられた。これによって、艦尾に被弾しても、前から着艦して、完全な無力化を避ける、抗堪性強化策であった。しかし、第二次世界大戦の頃には、高速大型の全金属機になって、正規の着陸が課題になり、逆着艦などは完全に無意味な存在になっていた。
 昭和9年に計画された飛龍は、全般的に、第二次世界大戦後半の大型重量高速となっていく飛行機の発展に着艦拘束装置やエレベーター、格納庫の床強度などが不足気味になっていた。ここいら、イギリスのアーク・ロイヤルあたりにも見られる、同世代空母の宿痾って感じだな。

松田孝宏「名空母『飛龍』太平洋バトルリポート」

 大戦前には、北部仏印占領、仏印・タイ間の紛争への介入、南部仏印進駐などへの、護衛に従事。大戦では、劈頭の真珠湾攻撃から、ウェーク島攻撃、その後インドネシア攻略の支援でアンボンやスラバヤ攻撃。ポートダーウィン空襲、ジャワ島攻撃、インド洋作戦に従事。インド洋作戦では、ブレニム爆撃機に奇襲を受けるが無傷で切り抜ける。しかし、これがミッドウェー海戦のときには、悪い方の目が出てしまう。
 ミッドウェー海戦の際には、陸用爆弾から艦艇用爆弾爆弾への変更中に爆撃を受け、3隻が大破炎上。その中で1隻だけ生き残った飛龍は、敵機動部隊のほうに突進しながら、二波の攻撃隊を出撃、ヨークタウンを大破させる。しかし、薄暮を狙った第三次攻撃隊の準備中に、敵機の攻撃を受け大破炎上。

菊池征男「『飛龍』機関科将校・萬代久男の航跡」

 ミッドウェー海戦の際に、放棄された飛龍に取り残された機関科の体験記。電話が切れて、全員戦死と思われていたため、取り残されてしまった。6/5の衝撃が爆撃で、6/6日の出直前の大爆発が、飛龍を放棄する際の雷撃なのかな。二発受けていたら、機関科の人々はどうなっていたやら。
 100名ほどの人々が機関室から脱出。しかし、急激な沈没に巻き込まれてカッターに乗り移れたのは39名。15日漂流したあと、米軍の哨戒機に発見され、駆逐艦に収容。捕虜となる。アメリカ本土の捕虜収容所を転々とすることに。
 戦後は海自に入隊。あとは、1998年のミッドウェー再訪のエピソードなど。

赤井照久「米軍報告書に見る『飛龍』vs米空母の死闘」

 1隻残った飛龍と、それに撃破されたヨークタウン乗員をメインとした戦いの様相。
 空母同士の戦いって、15分くらいで一度の戦闘が終わるのだな。一瞬で大損害が出る。あと、米軍はレーダーで攻撃を察知して、防火対策を取ることが出来たというのが、被害の差になったんだろうな。日本海軍が艦爆で炎上しまくったのと比べて。
 あとは、ヨークタウン軍医の修羅場とか、いったん総員待避したものの、曳航・改修しようと努力する姿。しかし、潜水艦の雷撃で止めを刺される。
 しかし、魚雷4本喰らわないと沈まないのか…

大塚好古「マニュアル特集3:艦上戦闘攻撃機シュペルエタンダール

 軍側はA-7が欲しかったけど、政府の国産機ごり押しで、エタンダールを改修した機体になった。しかし、エンジンが非力で速度・運動性とも戦闘機として運用するには不足で、海軍はF-8戦闘機を手放さず、調達数が減らされてしまったとか。フランス機の最大の弱点は、このエンジンだよなあ。
 攻撃機としては十分な能力を持っていた。段階的な改修で、レーダーや誘導兵器の運用能力が付与されていった。

宮永忠将「フランス戦艦物語第10回:新型戦艦開発計画7」

 リシュリュー級戦艦の建造計画。1935年あたりになると、日本だけでなく、どこの国も守る気があんまりなくなってるのな。しかし、35000トンって、枢軸側の新型戦艦と比べると、割とコンパクトな船だな。艦橋前に主砲を集中配置するデザイン、というか、フランスの戦間期の戦艦、割と好きなんだよな。
 サクッと両用砲を諦めて、対空砲は別に装備という思い切り。
 どちらも、建造中にドイツ軍が侵攻してきたので、その辺にあった対空機銃を積みまくって、アフリカ植民地に脱出。

荒木雅也「海上自衛隊潜水艦最新レビュー」

 スターリング機関搭載AIP潜水艦からリチウムイオン電池搭載潜水艦への変化。あとは、通信衛星への高指向性電波送信とデータバースト通信によって、潜水艦もデータリンクに加入できるようになってきたとか。
 次世代は音響ステルスで、形が変わってくる可能性も。

高橋昇「国産戦車の魁“Type89”便覧」

 八九式中戦車の解説。第一次上海事変では、障害物に苦労したし、陣地の破壊に失敗しているから、この時点で威力不足は認識されていそうだなあ。

久野潤「燃ゆる空母『飛龍』より生還した元兵士の記録」

 砲兵だと、普段はあまりすることないのな。
 ミッドウェーでは、対空戦闘に従事。被弾時に発令所に閉じ込められて窒息しかけるも、外から開けられて九死に一生を得る。しかし、電気系統がやられて、バケツリレーで消火作業って、本当にどうしようもない感じだなあ。
 海戦後は、軟禁みたいになっていたりとか。終戦インドネシアで沿岸砲の砲台小隊長として迎える。なんだかんだ言って、ミッドウェー以外は、悲惨な戦闘に巻き込まれていない感じだな。