『世界の艦船』2021/6号

世界の艦船 2021年 06 月号 [雑誌]

世界の艦船 2021年 06 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2021/04/24
  • メディア: 雑誌
 最新刊をスパッと読み終わった。今回は原子力潜水艦の特集。とはいえ、それほど特筆するような変化はなかった感じだなあ。予定通りに行くとロシアのボレイ級やヤーセン級が向こう数年で次々と就役したり、中国の晋級、商級がいつの間にか数が揃っていたり。漢級、後期の艦は雑音低減などの改良が加えられたのか。
 アメリカのシーウルフ級とロシアのシエラ級って、なんか対潜水艦戦用特別艦という感じで役割が被ってるな。


 本文は原子力潜水艦の歴史を回顧する「原子力潜水艦:その誕生から今日まで」と、原子力潜水艦のメカニズム1~3、米中衝突シミュレーション、それに「『日の丸原潜』建造の可能性を探る」。
 こうして歴史を振り返ると、スレッシャー級やロサンゼルス級のような同一タイプの大量建造というイメージのあるアメリカも初期には試行錯誤していろいろ作っていたのだな。ロシアは攻撃原潜戦略原潜巡航ミサイル原潜の三本立てが続いてきたため、いまだに多数のタイプが混在する。


 「原子力潜水艦のメカニズム」は、船体、機関、兵装にわけて解説。
 フランク・アレイ・ソナーには円筒形の単殻構造のほうが有利とか、効率は低くなるけど安全性が高い加圧水型原子炉の搭載など。沸騰水型はタービンの整備がしにくいとか、汚染範囲が広がるとかの問題があるのだろうなあ。効率を上げるべく一次冷却水の圧力を上げると容器が重くなって船として困るといったトレードオフ関係があるという。
 ヴァージニア級のハワイの写真でシュノーケルが付いていると解説があって「えっ」と思ったけど、非常電源用にディーゼル発電機を搭載しているのね。
 あとは、潜水艦のいろいろな任務など。


 矢野一樹「『日の丸原潜』建造の可能性を探る」はとりあえず原潜が欲しいと思ってるのは分かる記事。なんというか、もう「日本の技術力」に説得力ないよなあ、と。アメリカから技術移転を受けるならともかく、自力建造で5年程度で出来るわけないだろう。普通に戦力化に30年くらいかかる。船だけでなく原子力艦船を運用するインフラも考えていない。当然の問題を「杞憂」としてしまうような人が所属した組織に任せたくはないなあというのが正直な印象。


 竹田純一「懸念高まる中国海警法施行」は、タイトル通りの記事。「管轄海域」が明らかに国連海洋法条約をはみ出してるんだよなあ。九段線が明確に違法だし、EEZという権益の限られた領域に強い権限を与えてしまっている。さらに、武器使用基準の恣意性。


 米田堅持「創設70周年を迎えた海上保安大学校」は、海上保安大学校の回顧。バタバタと制度が作られて、最初は機材も揃わなかった。正門も後回しだったとか。最初の練習船「栗橋」は19世紀末建造のサルベージ船、その後海防艦を転用した練習船で、ここから「こじま」の名前が引き継がれて、二代目、三代目とだんだん大型化。だんだんと門戸を開いていく。契機に左右されない人材採用という考えは90年代以降の海運不況で正しさが証明された。また、商船出身者の採用は、同じ学校出身者が取り締まり側、取り締まられる側にいるのが良くないという話だった、と。


 多田智彦「現代の艦載兵器」。今回は潜水艦用の長魚雷。米英伊仏独スウェーデン中韓日とそれぞれで自力開発されている。これ、機密性が高いからなのか、手頃な開発対象だからなのか。
 一見してロシアの魚雷の航続距離が短いけど、開発年次が古いからか、サバ読んでるのか、実際に技術力が低いのか。あと、やっぱりポセイドンの正気度低いなあ。原子力推進核魚雷とか…


 白石光「名鑑クライマックス」。今回取り上げられた艦は戦艦長門。一番好きな戦艦だけど見せ場がない子だのう。乗員が誰も乗ってない戦後がクライマックスとか…


 写真ではイタリアのPPAとカタール哨戒艦シェリブが印象的。というか、どっちもかっこ悪くないですか? フェイズドアレイレーダーになって上構が大きくなると言うデザイン上の制約があるのだが。PPAの問題は、艦橋までとレーダー部分の線が繋がってないところだよなあ。あそこがなんとかなったらかっこよくなると思うのだが。
 あとは、イタリア空母カブールへのF-35Bの着艦試験とか。カーフェリー涼かぜがなかなか良い。
 通報艦鈴谷、旧ロシア防護巡洋艦ノーウィック、カラフトで大破擱座。その後、浮揚修理して日本軍艦籍に入るが機関のダメージが大きく巡洋艦として運用できなかったという。もったいないなあ。結局、5-6年くらいしか使ってないのか。