白石光監修『模型でたどる太平洋戦争の海戦シリーズ:真珠湾奇襲1941.12.8』

真珠湾奇襲1941.12.8 (模型でたどる太平洋戦争の海戦シリーズ)

真珠湾奇襲1941.12.8 (模型でたどる太平洋戦争の海戦シリーズ)

 タイトル通りの本。真珠湾攻撃に参加した艦艇を模型で再現、戦史の解説を付している。図書館で見かけて、アメリカの補助艦艇が比較的沢山収録されているので、借りてきた。
 しかし、改めて読むと、意外と知らないことだらけだな。そもそも、太平洋艦隊の根拠地が真珠湾になったのは、1940年になってから。あるいは、アメリカ側がまるっきり襲撃を警戒していなかった状況。飛行場の真ん中に飛行機を集めていたとか、ハワイ北側の警戒網を解除していたとか、本当に油断していたのだな。


 アメリカの艦船が立体化されているのが良い。日本側の参加艦は機動部隊の花形だから、見慣れているが、奇襲を喰らった側のアメリカ艦艇はあまり見かけない船が多いので新鮮。21ノット級の戦艦とか、結局、活躍できなかったわけだからなあ。戦艦でもレジンキャストキットが多いのも印象的。流石に16インチ砲搭載艦はプラキットだけど、ほかは全部レジンかフルスクラッチなんだな。一方で、工作艦水上機母艦でも、とりあえず、レジンキットは出てたりするのは、アメリカ人の地元愛か。
 しかしまあ、個人的に、太平洋戦争時のアメリカ艦艇ってかっこ悪いなというが第一印象。日本海軍の高速志向が異常なんだろうけど、こう戦艦は寸胴な上に、真ん中あたりで真っ二つに切れる長船首楼はデザイン的に微妙。条約型巡洋艦も、後部上構のあの形はどうにかならなかったのだろうか。クリーブランド級の大型軽巡とか、第一次世界大戦フラッシュデッカーはまだマシだけど。戦艦では、アリゾナが好きかな。
 各艦ごとに、どこに被弾して、どういう打撃を被ったかが紹介しているのもおもしろい。800キロ徹甲爆弾でアリゾナを、魚雷の集中攻撃でオクラホマを転覆。さらに、ウェストヴァージニアが大破着底。第二次攻撃でネヴァダが浅瀬に座礁というところで、3隻程度が中小破どまり。歩留まりとして、どの程度効果があったのかね。本当に、戦艦と空母しか狙っていなかったのだなという印象。


 終章の検証で、真珠湾の工廠施設の人的資源を狙うべきだったと書かれているが、それって、どうやればできたんだろうな。クラスター爆弾でもばら撒くのか。あるいは、居住区を無差別爆撃するか。なかなか難しそう。
 そもそも、真珠湾の太平洋艦隊を一時的に機動運用できなくする目論みだったのだろうし、戦艦を全滅させた時点で、それは成功していたのではないだろうか。比較的損害軽微だった3隻も、2-3ヶ月の修理期間が必要。他の艦は年単位で無力化。復旧に追われる。で時間稼ぎには成功している。これで、空母が停泊してれば、また、ずいぶんと歴史の展開も変わったんだろうけど。


しかし、大日本絵画の本、なんか、コストパフォーマンスが悪いよなあ。この本も、自分で買うとしたら3600円はきつい。


 気になった艦。
 駆逐艦ワードDD139、工作艦メデューサAR1、給油艦ネオショーAO23、水上機母艦タンジールAV8、駆逐艦母艦ドビンAD3、軽敷設艦トレーシーDM19、病院船ソレースAH5、小型水上機母艦アボセットAVP4、水上機母艦カーティスAV4、工作艦ヴェスタルAR4、敷設艦オグララCM4