海底に眠る蒙古襲来: 水中考古学の挑戦 (歴史文化ライブラリー)
- 作者: 池田榮史
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2018/11/16
- メディア: 単行本
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以前の調査では、音波探査装置の分解能の限界、地図上の座標確定に問題があった。調べてみると、大体、近代の沈没船などで会った。高分解能の音波探査装置の導入。音波の反応が、実際になにを捉えているのかを確認するために開陽丸の調査などの準備段階で時間がかかっている。さらに、水中の遺跡を正確に地図上に表示する、座標の確定方法に音波探査装置と沈めた金属板を使うなど。
で、当たりを付けた場所に潜水して、堆積物中に突き棒を入れて、固い手応えがあるポイントを狙う。慣れると、木材と石の違いも分かるようになるそうだ。で、実際の発掘はプロのダイバーが担うことになる。発掘作業や水中撮影画像加工のスキルを持ったダイバーの重要性。
いざ、発掘となると、水圧で泥を吹き飛ばして、堆積物を移動させる方式が採られる。このため、泥が舞い上がって、実測・図化・撮影などが可能な眺望が得られなくなる。さらに、自然の濁りや天候も影響して、記録作業に時間がかかる。
周辺にも、音波によれば遺物が存在しているはずなのに、全く存在しないといった予想外の事態も。
さらに資金の確保や国史跡指定の作業などなど。
現在のところ、モンゴル船の船体が2隻と碇の木材・石材を発見。記録を取った後、埋め戻して保存しているが、今後の課題も、山積み。
現状は、試掘の段階だが、実際に船体を引き上げるとなると、巨額な資金がかかる。引き上げ作業そのものの費用に加えて、巨大な木造構造物を保存する設備の準備の必要がある。ちょっとやそっとの方法では調達できない。松浦市の木製品保管施設は、既存の出土木製品の処理待ちが貯まっている状況。
また、船体の木材の隙間を埋めるのに、漆喰が使われているが、これを壊さないように回収し、地上で保存する技術が存在しない。技術的にも難しい。
さらにフナクイムシの問題。沈没後にフナクイムシが大発生し、早期に堆積物の下に埋まって無酸素状態になった部分のみが現在に残った。しかし、発掘で堆積物を取り除いた結果、埋め戻したとはいえ、木材に酸素が供給されやすい状況になってしまった。そして、フナクイムシの食害に対する、確実な防護方法はまだ分かっていないというのが現状らしい。銅イオンで防除する方式が今までは採用されてきたが、シリコン樹脂を塗布したナイロン織物シートで覆い無酸素状態を作り出す方法が試されているとか。
現地保存も難しいが、引き上げも難しいというのは、頭が痛い話だな。
資金が潤沢にあるなら、恐竜化石の発掘のように周りの堆積物ごと、何らかの素材でカバーして、起重機船か何かで、ごっそり引き上げる手も使えるが、いくらかかるか分かった物ではないな。あと、下をどうやって掘削するかが問題かな。まるごと収容できるドックを準備しないといけないし、ちょっとやそっとの費用ではどうしようもない感じだが。
参考文献に、『平成十八年~平成二二年度科学研究費補助金基盤研究(S)(課題番号・18102004)「長崎県北松浦郡鷹島周辺海底に眠る元寇関連遺跡・遺物の把握と解明」報告書』の文献資料編第一冊『《元寇》関係史料集(稿)2:中国・朝鮮史料編』というのがものすごく興味あるのだが、科研費の報告書類って、一般の図書館では閲覧できないんだよなあ。
県立図書館のレファレンスで相談したら、閲覧くらいはできるかなあ。ネット上で、公開されていればいいんだけどねえ。