県立美術館感想

 昨日の続き。以下、三つの展示会をまとめて。
 そういえば、狩野川台風って、なんかひどくて、あちこち洪水があった台風ぐらいしか知らないな。

熊本県立美術館「美術館コレクション:第2期:名作浮世絵の世界」

 熊本城特別公開の行列を目前にして、急遽入館。
 タイトルにあるとおり、熊本県立美術館が所蔵するコレクションをまとめて紹介する企画展。寄贈された今西コレクションから、肉筆浮世絵とその前後を占める作品をまとめて紹介する。
 しかしまあ、誰にも見せることなく、普通のサラリーマンが一生かけて集めたコレクション。しかも、偏りなく、満遍なく肉筆浮世絵を収集した。コレクター魂がすごいなあ。


 個人的には、江戸美人画に興味が無いので、前史と位置づけられる風俗画や後半のさまざまなテーマの作品に興味が行く。
 写真撮影可ということで、興味を引かれた作品は撮影して、それを元にまとめを書いている。残念ながら、「著作物に転載」は禁止だそうで、ここには載せられないが。
 犬追物図屏風や遊船図、橋上群衆図あたりの、山ほど人間が出ている絵が楽しい。遊船図は、その名の通り、船遊びの図。屋形船で遊んでいる人々がいる一方で、料理は手前側の船に炉を設置して出すんだな。昔風の包丁術で切っている姿とか、すり鉢で何かすりつぶしているところが、当時の料理法をうかがわせる。
 橋上群衆図は、川開きの花火の時の両国橋の姿。橋の上の群衆が満杯という感じで。手前で手すりにもたれてスイカを食べている兄ちゃんに目が行く。


 後半のさまざまなテーマの作品では、「松本幸四郎二木弾正図」や「鍾馗図」が好き。これらは、展覧会の紹介ページにも掲載されている。
 あとは、「美人目隠し達磨図」の「これこれにょほほ」とか言いながらにやついているような顔の達磨さんが楽しい。
 あるいは、花魁と禿がかたまってお昼寝中の「風流四睡図」が微笑ましい。

熊本県立美術館「生の芸術 Art Brut(アール・ブリュット) 展覧会Vol.5」

 講堂で開かれている、障害者の人が作った作品の展示。
 入り口そばに展示されている、自閉症の人が紙に切れ目を入れた作品がすごい。細かく細かく、紙を裂いている。レースみたいな感じになっていて、思わず目を引きつけられる。


 あとは、奥の方に展示されている切り絵のお二方が、安定した出来。残念ながら、お名前をメモしていなかったのだが。紐や布を使った切り絵が、ぱっと目を引く。

熊本県立美術館細川コレクション展示室「細川コレクション2:大名細川家の歴史と美:細川斉茲と絵画」

 別棟、細川コレクション展示室にて。二度目。
 しかしまあ、疲れているときとフレッシュなときでは、感受性がずいぶん違うのだな。自分でもびっくりだ。だいたい、細川コレクション展示室に入るときは、ダブルヘッダーで消耗した後なのだが、こうも違うものかと。


 とりあえず、細川月翁の「墨蘭図」がけっこう好き。
 あと、谷文晁「東海道勝景図」と杉谷行直「富士登山図巻」は、巻き替えで、前期と違うところが見られた。
 前者は、大井川の渡しの光景。広い河原に、細い流れが幾筋も。現在、航空写真で見たときと変わらないんだなあと、当たり前ながら感心。つーか、静岡の川って、他と違って、広い河原に細い流れの川が多いんだよな。
 後者は、富士山頂上と砂走。お遍路さんが、砂地を滑り降りている?姿が印象的。滑ってるのではなく、単純に砂煙がひどいだけかもしれないが…


 前期から予告されていた、山中神風の「説話図屏風」が展示。個人的には、もう一つの「老梅図屏風」の描写が好きかな。ゴツゴツした、老いた梅の木に、すっと伸びる若芽と花。淡い色彩が、しみじみと。