『ドイツ夜間戦闘機完全ガイド:Bf110/Ju88/He219』

 『ミリタリークラシック』誌の記事の再録本。ナチス・ドイツ夜間戦闘機の記事を集成したもの。とりあえず、He219ウーフーがかわいい。
 結論はモスキート夜戦最強ということか。レーダーの性能で格差があると、絶望的だよなあ。ドイツ軍はダイポールアンテナで飛行性能を低下させる一方、モスキート夜戦はフェアリング内蔵のレーダーで速度を維持できる。それでも、ウーフーは一矢を報いる可能性があった、と。一撃必殺の夜戦だと格闘性能は期待されないのだろうけど、モスキート夜戦の運動性能はどんなものだったんだろう。
 あと、対戦序盤のドイツ軍航空機の意外な遅さとか。


 Bf110はガチで単発単座戦闘機と戦うつもりだった機体。フランス戦までは、高い降下速度で互角に戦えていたけど、バトル・オブ・ブリテンでは護衛のため、自由に動けず一方的にやられることに。ここで、制空戦闘機としての運用を諦められて、襲撃機や重爆迎撃、夜間戦闘機に転用されていくことになる。ガチに戦闘機として戦うことを考えていたという点では、屠龍と近いかな。
 夜間戦闘機としては、戦闘機として作られただけに運動性は十分だったが、その分機体が過小でレーダーなどの追加装備での飛行性能低下が著しかったという。しかし、長距離戦闘機として構想されたわりに、航続距離が短いのが気になる。


 もう一つの主要機種がJu88の夜戦型。こちらは高速爆撃機として開発され、そちら方面でも主力を占めたが、高速を買われ、夜間戦闘機としても活躍。爆撃機だけに運動性能は劣るが、Bf110と比べて大柄な機体は、レーダーなどの追加装備を無理なく搭載できた。
 機首に乗員を集中しているのが、日本海軍の銀河みたいだな。機体の規模もほぼ同級だし、夜戦転用の構想も似ている。


 He219ウーフーは、専用機材として、最初から夜間戦闘機として設計開発された機体。それだけに使い勝手は良かったようだが。如何せん、生産数が200機強では、活躍がエピソード的に語られる程度だよなあ。なんか愛嬌のある飛行機だし、出撃すれば戦果を挙げやすい機体だったようだけど。
 ハインケルがナチ党員じゃなかったから冷遇されたのかもと書かれているけど、夜間戦闘機隊そのものが傍流だったろうから、生産機種の絞り込みを考えると、どうしても後回しにされるよなあ。ハインケルがヒトラーのお気に入りだったら、取り入って無理矢理リソースを引っ張ってこられたかもという点では、政治的立場が影響したかも知れないけど。


 夜戦エースも興味深い。もっぱらBf110を駆ったハインツ・シュナウファー、逆にJu88メインだったハインリッヒ・プリンツ・ツー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン=ザイン、両方に登場したヘルムート・レント、「ウーフーの育ての親」ヴェルナー・シュトライプと搭乗機の特色があるのだな。あと、だいたい、1910年代後半生まれが前線で搭乗する世代だったのだなあとか。