イチニ『出戻り(元)王女と一途な騎士』

 とりあえず、主人公のアデル姫の天然キャラが印象深い。
 小説を読みまくっていて、その展開で物事を考えたり、無意識に毒舌だったり、エロかったり。兄王の髪ネタがいじらないであげて感強い。帰国して開口一番「はい。お兄様。お兄様は……なんとお労しい……」とか、誕生日の贈り物にカツラとか。
 ルイスとの再会のシーンも楽しい。言いたい放題に、「ルイス・ローマイア……お前は本当に、これでよいのか」とか兄王に言われる始末。


 第三王女と護衛の見習い騎士。互いに淡い恋心を抱きつつも、アデルは大国の後宮に入ることになり、別離。そして、8年後、大国の王が亡くなって、後宮は解散。アデルは母国に戻ることになる。出戻った母国で、見違えるように成長したルイスに降嫁を願われて、受け入れる。
 初夜をめぐるすったもんだが、なんともらしくて楽しい。自分もはじめてだから乱暴にしないようにと、隣室で一発抜こうとするルイス。それを目撃して、ドアを占めるアデル。そこからかみ合わない会話。そりゃ、ルイスも疲れるよなあ。で、「お前の子種は全部、その一滴さえ、わたくしのものだもの。ちゃんと全部、わたくしの中にくれないと駄目よ」とか、めちゃくちゃ攻撃力の高いセリフをぶっ込んでくるアデルさん。
 6章以降は、書籍版の加筆。後宮に行く際に持たされた避妊薬の副作用。それを知らなかったアデルと、彼女を傷つけたくないと思ったルイスや兄王たちとのすれ違い。そして、和解。
 2人のいじらしさがいいんだよなあ。


 後ろ三分の一程度が番外編と後日譚。降嫁を発表した舞踏会につけた琥珀のイヤリングをめぐるエピソードがホントにぐっとくる。再会の希望もない、渡す当てもないのに、出張先で琥珀のイヤリングを買うルイス。アデルの髪の色に合わせたであろうそれを見つめるルイス。報われないであろう恋をみて、心を痛める上司。
 あとは、小説に線を引くか引かないかで揉める「我儘」も楽しい。