三沢ケイ『どうも、噂の悪女でございます:聖女の力は差し上げるので、私はお暇頂戴します』

 バカ王子と略奪女が自滅するお話。知るべき事を知らず、王としての最大の任務も蔑ろにした末路。


 婚約破棄劇でブチ切れて、痛い目にあえばいいと略奪女を「代理聖女」にしたマリーアンジュは再起不能にするまでのつもりはなかったけど、実は彼女が欲しくて、巨大な落とし穴を掘っていた人物が…
 聖女マリーアンジュにとっては、ひとときの休暇か。


 略奪女がまともなら、もう少しまともな結末だったんだろうけど、田舎の浄化を面倒くさいとサボり倒したあげく、瘴気が蔓延、魔獣まで出現。王太子を陥れたい人物にあおられて、二人して討伐に赴いて、略奪女は神聖力不足でぶっ倒れ2ヶ月人事不省、王太子は魔獣に襲われて再起不能。完全に失脚。
 途中、調子に乗り倒したあげく、予想通りに自滅するのが、カタルシスだなあ。いかに、元婚約者と略奪女を嫌に描くかが、作家の腕の見せ所。仕事を手伝って、2人の評判を上げたあげく、婚約したからと唐突に手伝いをやめる。引き継ぎナッシングという主人公側の意趣返しも乙なもの。
 最終的に、親である国王と王妃からも見捨てられる王太子
 まあ、悪女呼ばわりして、都合良いところだけ頼ろうとしたら、そりゃ見捨てられるわな。