卯月みつび『訳あり悪役令嬢は、婚約破棄後の人生を自由に生きる 1』

 王太子と婚約した結果、他の三公とのパワーバランスが崩れ、内乱の危機に瀕していることに気がついた公爵令嬢の主人公、レティシア。とりあえず、悪役令嬢を演じて、王太子の懇意な娘を「いじめて」、婚約破棄されるように誘導する。
 と、卒業パーティの場で国王が倒れ、心肺停止状態になったところで、前世の記憶、自身が看護師であったことを思いだし、国王に心肺蘇生処置を行って、蘇生させることに成功する。
 その後は領地で謹慎扱いでぐーたら、食っちゃ寝して太ってダイエットする羽目に陥ったり、第二王子クロードが押しかけてきて、目論見を看破されて協力を求められたり。ついでに、婚約破棄による権力関係の安定は、国王と公爵がこだわっていて、なかなか進まず。


 後半は、事件が次々と。
 クロードから護衛の騎士を付けられたので、力試しに出かけたら、「命食らい」なる致命的な病気に遭遇。水魔力の応用で、毒素を体外に排出し、治療に成功する。そこから、「命食らい」の原因を解明し、対策を可能にする。そこから、感染症予防に手洗いの習慣を広めたり。
 しかし、結果として、レティシアの名声が高まってしまい、他の三公爵を刺激してしまう。対策として、王太子の恋人、前世の記憶を持つ令嬢アンナに押し付けようと画策する。
 しかし、結局実力行使に出られて、誘拐されるレティシア。モンタンベール公爵に結婚か死かを迫られるが、時間稼ぎをしていたら、救援が。クロード、騎士のクリストフ、専属侍女のシュザンヌの三人の救援隊で、一気に護衛をたたきのめす戦闘力。
 救出されて、帰宅したら、今度は王家から疫病が蔓延しているからと救援要請が。取るものも取りあえず駆けつけると、ペスト様の疫病が流行、治癒魔術が効かずに次々と死者がでていた。さらには、弟も感染。
 それに対して、レティシアは「命食らい」と同じように水魔法の応用で対処しようとするが、他の魔術師が習得できない。血液内の成分を理解できないので、魔法に乗せられない。唯一、現代日本の知識を持ち、高い光魔法の適性を持つアンナが菌に直接光を当てる離れ業で、ほぼ完全に菌を取り除いた後、残りをレティシアが水魔法で取り除く分担で治療に成功する。


 しかし、功績を挙げすぎたというか、内乱に投資して損をした貴族の恨みが集中してしまったレティシアは、治療の負荷で倒れたのを機に、死んだことにして国外に脱出。名前を変えて、平民としてやっていくことに。そこには、王位継承権を放棄したクロードも一緒にやって来て。


 隙あらばぐーたらして、酒を飲もうとするレティシアさんがいいなあw
 あと、水魔法って、人体がかなりの水分を含んでいる以上、なかなかに攻撃的に使えそうだよなあ。あと、干物作りに便利そう…


 内乱準備で森を荒らしたことが、ネズミの移動を引き起こし、それが王都にペストをもたらしたって、なかなかにありそうな怖さが。というか、エマージェンスウイルスって、結局、人間の生活圏の拡大が影響しているからなあ。エボラとか。