今年印象に残った本2023(ラノベ・フィクション部門)

 今年は、なろうで読んだ小説を紙版でも買うようになったので、一気に読了数が膨脹。というか、単行本サイズはお財布にも優しくないし、起き場所的にも困る。続きが紙版でしか出ていないのは、買うしか無い訳だが…

10位 福留しゅん『残り一日で破滅フラグ全部へし折ります:ざまぁRTA記録24Hr. 1-2』

 断罪の日の前日に前世の記憶を思い出した主人公が、一日で手を打って逆転するお話。1巻が「悪役令嬢」がひっくり返すお話で、2巻がざまぁされるヒロインがそれをされないように手を打つお話。とりあえず、1巻が痛快。裏側の手段も使って、攻略対象者を排除して、裏で手を回して、逆転を勝ち取る。
 一方で、2巻は主人公の立場が弱いために、弱者の戦いになって痛快さは減る。まあ、2巻続けて同じ構造の物語を続けても、マンネリにしかならないからの判断なんだろうけど。というか「真実の愛」に誘導しておいて、はしご外しだよなあ。
 乙女ゲームは三作目まで出ていた設定だから、アレクサンドラの孫世代のエピソードも可能ではあるか。

9位 優木凜々『男性不信の元令嬢は、好色殿下を助けることにした。』

 挿絵が好き。
 婚約破棄されたあげく、魔力暴走で自身が「魔女」であることが発覚。魔女の先輩にかくまわれて生活するヒロイン、クレア。いろいろ仕事を押し付けられていたのが一変、のんびり生活を満喫するが、脱走時に助けてくれた第一王子ジルベルト殿下に毒殺の危険が迫っているという情報を得て、恩返しに守ろうとする。すると、「好色殿下」と呼ばれるような女性の陰がほとんどないことに気付いて、好意を抱いていく。
 完璧淑女なはずのクレアさんが、一人暮らしをすると掃除と整理が全然できなくて、汚部屋生活になるというギャップが良い。

8位 鰺御膳『人質姫が消息を絶った。:黒狼の騎士は隣国の虐げられた姫を全力で愛します』

 こちらも挿絵が好み。
 戦争していた国同士が和平を結んで、姫がお輿入れということになった。しかし、その姫が期日になっても現れない。何があったか捜索することになった主人公アーク。しかし、それで分かったのは冷遇されて、護衛もなく放り出され、生存が絶望的な姫の状況。徹底的に調べて感情移入してしまうアーク。
 しかし、自国の王都で、姫の部屋にあった香水を付けた女性とすれ違って。
 出会いが劇的でいいなあ。
 そこから、姫の実家を倒して貿易港の利権を手に入れようと企む第三王子にカップルで協力していくことに。一方で、アークとソニア姫も互いに愛し合うようになって。姫の側も、探し出してくれた人ということで特別。

7位 gacchi『うたた寝している間に運命が変わりました』

 ヒロイン視点からすると、まさにそうなんだよなあ。
 家で冷遇されて、ほとんど自給自足の生活をしているリーファ。ある日、王子と婚約解消の上で、修道院に送られると父親から言われ、それをお世話になっている先生に話したら、一気に先生=王弟殿下と結婚することに。
 一方、王弟殿下はいろいろやらかしている王妃以下の連中を叩き潰してお掃除に八面六臂の大活躍。

6位早田結『どクズな家族と別れる方法:天才の姉は実はダメ女。無能と言われた妹は救国の魔導士だった 1-2』

 「魔力が無い」と虐待され、召使いのように扱われている主人公ノエルが、実は稀少な付与魔導士だったという話。虐待されているなか、秘密裏に国立学園に特待生として入学。そこで、付与魔術を使えることが見いだされて、いろいろな人から支援されながら、成長していく。その中で、入学試験の試験官から継続的に相談に乗ってくれる先生と恋仲に。実はその先生が王子で、最終的に国王になってしまって。
 国神の影響が強いというか、魔導師を大事にし、一番優秀な魔導師を国王にしなければならないという縛りの強さ…
 2巻は後日談。結婚後にノエルがあっちこっち出かけて夫をヤキモキさせたり、子供が騒動に巻き込まれたり、お見合い大作戦を決行したり。あとは、虐待していた姉の後日談とか。

5位 ぽよ子『公爵令嬢は我が道を場当たり的に行く 1-2』

 前世持ち&特殊な家に育った、天然気味の令嬢が、王太子の婚約者として生活していくお話。6歳から16歳まで。前世が歴史戦略シミュレーション大好きだっただけに、歴史やバトル方面に関心が偏り。さらには、家がなにやら行き場のない戦闘力高い人間を集めまくっているだけに変な方向に暴走していく。
 さらには、こちらの世界から地球に転生した人物が、こちらの世界をモデルに乙女ゲームを作っていて、攻略キャラもヒロインも、相当違う。というか、ポンコツヒロイン、マリーさんが好きだなあ。

4位 悠十『乙女ゲームは終了しました 1-3』

 むやみやたらと強くて、あちこちぶっ壊しまくるベルクハイツ一族と、それを見て遠い目になる周りの人間が楽しい一作。ベルクハイツも歩くと犯罪者に当たるとばかりに、次々と跳ねっ返りがケンカを売って返り討ちに遭う。
 特に、初の女子にして、次期当主であるアレッタ。見た目は普通のお嬢さんなのに、やたらと強力な脳筋で、ふらっと悪漢が姿をさらして、狩られるという。
 王太子の婚約破棄騒動に巻き込まれて、婚約者が悪役令嬢と国外追放になろうとして大騒ぎに。その後も、続編の悪役令嬢が幼馴染み兼新婚約者を奪おうとやって来たり。
 ベルクハイツ領の面々が濃くて…

3位 イチニ『出戻り(元)王女と一途な騎士』

 とりあえず、ヒロインのアデル姫の天然かつ妄想癖キャラが印象深い。コレに付き合うのは大変そうだw
 第三王女と護衛の騎士、二人は淡い思いがありつつも、アデル姫が大国の後宮に納められることになったので別離。しかし、8年後、大国の国王が亡くなって、出戻ってきたアデルに、立派になった元の護衛騎士ルイスが求婚してくることに。
 不器用なルイスが、妙なこだわりを持つアデルに振り回されながら、結婚生活をしていく。たまに行き違いがありつつも。
 琥珀のイヤリングのエピソードがいいんだよなあ。渡す当てのないまま購入したルイス。しかし、思いもかけず彼女に渡す機会が来て。

2位 彩瀬あいり『セーデルホルムの魔女の家』

 精霊が見えることから、排斥されないように人から距離を置いて過ごしていた女性が、故郷に戻って家族を手に入れるお話。空気感の良いお話。
 凄腕の派遣メイドとしてあちこちを転々とする主人公の今回の仕事は、空き家になった育ちの家で、持ち主が療養するので家事を行うこと。そこには、同じく精霊が見えるため、おかしいと問題児扱いされている娘がいて、彼女に懐かれる。
 さらに、家主の軍人アダムとも、徐々に距離が詰まっていって。

1位 ただのぎょー『追放された公爵令嬢、ヴィルヘルミーナが幸せになるまで。 上下』

 浮気王子との対決に敗れた「女帝」さまが、押し付けられた夫の開発している、世界を変える発明で意趣返ししていくお話。
 魔素を魔石に変換する魔道具という世界を変える技術を目前まで持ってきたアレクシと、王妃教育を受けて、そもそもぼんくら王太子の仕事の段取りから肩代わりまで行っていた有能令嬢ヴィルヘルミーナの化学反応がすごい。
 平民ということで資金的にも、立ち止まっていたアレクシの研究を、金策して形にしていき、さらには、力が無ければあっさりと奪われかねない金のなる木を守る手を打っていく。秘匿から局地的軍事力の確保、国王に対抗できる権力である教皇を取り込む。最終的に、国王と王太子、実家、大司教と、彼女を陥れ、さらには技術を奪おうとした連中を黙らせることに成功。復讐の意欲は落ちても、王権を黙らせないことには安寧は来ない、か。
 恋愛モードのポンコツさも、ギャップがあって良い。