鰺御膳『肉と酒を好む英雄は、娶らされた姫に触れない。』

 同作者で、一月違いで刊行された人質姫が消息を絶った。:黒狼の騎士は隣国の虐げられた姫を全力で愛します』と似た物語構造でありながら、登場人物の個性によって雰囲気がけっこう変わる作品。
 「敗戦国となった祖国から人質として差し出された、冷遇されている姫」、「戦争で勲功を上げて子爵に叙された主人公」は共通しているが、片や『人質姫』では死んだふりして逃げ出す姫に特務部隊に所属する政戦両方で使える騎士、こちらは子爵というずいぶん格下の相手との結婚を従容と受け入れる姫と脳筋というか膂力を持て余している系の英雄とずいぶん違う。『人質姫』が二人で運命を切り開いていく感じとすれば、こちらは箱庭で仲をはぐくんでいく感じ。


 第一印象極悪のガストンと結婚させられたイレーネ姫。しかし、初夜で、心を気遣って手を出さなかったところから、不器用なやさしさを知る。さらに、書類仕事が苦手なガストンと部下連中を補助していくうちに、信用されて任される心地よさを知り、だんだんと距離が狭まっていく。
 次の戦のための地ならしとして、街道の整備や燃料の開発などを提案して、参謀としての地位を確立していく。


 泥炭を探査に出たら、巨大なスピアボアと遭遇。300キロの大物を一撃で宙に打ち上げて、首刎ねって凄まじいな。そこからの焼き肉パーティ。で、滋養を取りまくって興奮したイレーネさんに押し倒されるガストン。
 膂力が強すぎて、行為で興奮したら傷つけるかもと踏み出せなかったガストン。でも、イレーネさんが全部やるなら問題ないよねって…
 そこから、教会を建てて、結婚式のやり直し。


 ヒロインとヒーローが本当にかわいらしいというか。


 そういえば、なんでか「肉と酒」が頭の中で「肉と魚」と誤変換されるのだが…