鰺御膳『人質姫が消息を絶った。:黒狼の騎士は隣国の虐げられた姫を全力で愛します』

 とりあえず、挿絵のソニア姫がかわいい。イラストがつくと華やかだなあ。


 敗戦国から輿入れのお姫さまを迎えに出た主人公アーク。しかし、予定を過ぎてもつかないので、相手国に部下を派遣したら、行方不明という報告が。アークは、上司に使者を出す一方、自分は相手国に駆けつけるホットスタート。
 推定移動ルートを遡るも、まったく痕跡がないまま、スタート地点の王都まで着いてしまうアークたち一行。そこで明らかになったのは、まともに物も教育も与えられない虐げられた姫の姿と、護衛も嫁入り道具も持たせず、粗末な馬車で送り出した条約履行の意志が希薄な相手国の姿。そして、実は国境付近で盗賊に襲われたとおぼしき馬車が、姫が乗っていた馬車という事実。
 蔑ろにされたまま、おそらく命を失ったであろう姫の運命に心を重くしながら帰国するアーク。しかし、休暇で歩いていた自国王都の街路で、姫の自室で香った香水の匂いを感知して、その匂いの元の女性に声をかけたところから物語ははじまる。


 後半は、なんか、イチャイチャしているお話だよなあ。姫の境遇に感情移入しまくったアークと、はじめて追っかけてきた人にドキドキするソニア姫の、こうそわそわするような関係がいいなあ。
 アークから事情を聞いて、シルヴァリオ王国攻略の布石を進めていることを知ったソニアは、アドバイザーとして自分を売り込む。アークの妻として、最前線で活動する方向。しかも、結婚式は最短でやって、大規模な披露宴は攻略後にやりましょうという。腹黒王子と同レベルに腹黒い元姫の共振ぶりが。


 戦争で嫡男を失って、アークを婿に取りたいバラクーダ伯爵父娘が押しかけてきて、ニア対娘の論戦からの、アークと伯爵の肉体言語での対話とか。アークとニアのうれし恥ずかしデートとか。ニアに横恋慕してちょっかいをかけてくる伯爵家の息子を決闘でケチョンケチョンに潰したり。第六章、侯爵が配下を使ってアークの値踏みしてくるのはウェブ連載でもあったけど、ガンドリル伯爵家のフィリップのちょっかいは加筆か。狼牙棒でベテラン騎士の盾をガッツリ破壊してみたり、伯爵令息の心を折ったり、バトルシーンがいいなあ。
 そして、結婚式と子爵領拝領のためのマナーや儀式の特訓からの、結婚式。神からの祝福が相当強かったというのが、今後の布石か。


 バラクーダ伯爵との殴り合いの後、恋する乙女モード全開なニアさんの割れ鍋に綴じ蓋感が…