今年印象に残った本2021(ラノベ・フィクション部門)

10位 黄波戸井ショウリ『技巧貸与のとりかえし 1』

 なろう小説から。ネット掲載を読んで気に入ったので、文庫版も購入。文庫版なら買ってみようかという気分になるんだよな。
 ユニークスキル「技巧貸与」によってSランクパーティの支援を続けてきた。しかし、直接実戦に役立つスキルではないため、他メンバーからはひどい扱いを受け、最後は、貸したスキルを取り返し、その利息でユニークスキルを差し押さえ、ダンジョンボスを撃破。旅立つ。そして、狼人と出会い、「奪われた者たちの王」となっていく。
 非常に安定した出来の作品。

9位 ざっぽん『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』

 前巻読み返しからの、未読部分攻略。これも、なろう小説枠か。
 ルーティーが「勇者」を離脱したため、新たな「勇者」が出現。デミス神と加護について狂信的な人物、新勇者ヴァンは、加護が求める役割に徹するのが「正しい道」と考え、ゾルタンの住民を洗脳的な方法で動員しようと図る。それに対して、レッドたちは対立する道を選ぶことになるが。最新刊はまだ読めていない。


 外伝のほうは、レッドことギデオンとルーティーが旅に出た経緯。生まれた時から勇者の加護を得ていたルーティーは恐怖を感じないことで、迫害されていた。レッドは「導き手」として最初から高レベルで、彼女を守るために奔走する。
 より強くならないといけないと、レッドは騎士団に入り経験を積む。
 そして、来たるべき時。魔王軍の襲来と辺境の村々への侵攻。レッドとルーティーは、村の人々を率いて、略奪部隊を撃破する。元々、村の人々を良く思ってなかったレッドの、内部に敵を作って排除する手法、常套手段だけどなかなか呵責無いなあ。追放後のレッドはずいぶん丸くなったな。

8位 鳥羽徹『天才王子の赤字国家再生術:そうだ、売国しよう』シリーズ

 これも、途中で止まってたシリーズを一気読み。最新刊まで撃破。
 そろそろ、物語のクライマックスが近づいている感じだなあ。結局、ウェインの望みは、ニニムをフラム人の始祖の呪縛から解放することにあるのかな。始祖の直系というのが、どういう意味を持つのだろうか。
 一方で、レベティア教側もナトラのフラム人集団が何を隠しているのかを突き止め、カルドメリアがちょっかいを出してきそうだけど。
 ウェイン自身は、妹フラーニャちゃんに王位を押し付ける気でシリジスを泳がせているのかな。

7位 笹木さくま『女神の勇者を倒すゲスな方法 1-6』

 とりあえず、ボッチ勇者のアリアンがかわいい。


 「美味しい物」を食べたい魔王モルダバイトの娘リノの要望で人間界に姿を現した魔族たち。しかし、モルダバイトは倒しても倒しても、復活してくる「勇者」に嫌気がさし、知恵者を異世界から召喚する。それが、ゲス参謀こと外山真一だった。
 彼は、相手の欲望を暴走させ、人に周知させる形で敵を失脚させていく。そして、「魔族」への憎しみをこじらせた亡霊、自称女神のエレゾニアを倒すことで、魔族の居場所を作り、ヒロイン3人と結ばれる。
 雰囲気が好き。

6位 伊都工平『モノケロスの魔杖は穿つ』

 呪的装置としての国家とか、国家を形成するための手続きみたいなギミックがすごく好みです。
 「ソキエタス・スファエラ」によって東京を占拠され、土地を動かした日本は、国家として消滅。複数の小国家に分裂していた。その一つ、ムサシの国に住んでいた立木ヒロは、ひょんな事から魔法と戦いの世界に引き込まれてしまう。あれよあれよと「荏原の新王」となり、世界の命運を賭けた戦いに巻き込まれていく。
 すべての生命の母かあ。事実上、地球そのものだよなあ。

5位 月夜涙『回復術士のやり直し:即死魔法とスキルコピーの超越ヒール』

 これ、9巻で完結かと思ってたら、まだ続くのね。どこまで続くんだろう。


 「癒やしの勇者」ケヤルは、攻撃力を持たないため虐げられていた。復讐のために機会をうかがっていた彼は、最後の最後に魔王の心臓である「賢者の石」を奪い時を遡るヒールを行い、復讐を開始する。
 正体を隠して、遊撃隊的に不意を突いて倒していく前半がいいなあ。そして、人間至上主義のジオラル王国を潰し、魔族との同盟を樹立。これ、結局、「砲の勇者」ブレットへの報復はどうなったの。まだ、苛んでる途中なのかね。だとしたら、奪還されて復活するパターンだろうけど。
 戦後処理から、新たに不審な敵が出現する。

4位 瀬尾つかさスカイ・ワールド 1-11』

 なんでか、年一程度で読み返したくなるんだよなあ。
 MMORPGスカイ・ワールド」のプレイヤーが、いきなりゲームの舞台に転移させられてしまう。訳ありで、別ルートでやって来た主人公ジュンは、クエストマニア症を発症しつつ、スカイ・ワールドをクリアするべく「蒼穹のはて」を目指す。
 終わりない冒険の世界って、いいなあ。

3位 渡瀬草一郎ソードアートオンラインオルタナティブ:クローバーズ・リグレット 1-3』

 これも、完全に再読組。
 ソードアートオンラインシリーズのシェアードワールド作品。和風VRMMO「アスカ・エンパイア」のプレイヤー、ナユタはゲーム内で初心者の老人を助けたことから、「探偵さん」と仲を深めていくことになる。同じSAO事件で人生を狂わせた者どうしとして。そして、その先に。
 主人公ナユタがいいなあ。じわじわと積極的に侵食していく手管とか。

2位 まさみティー『黒鳶の聖者 2』

 2巻は、農村とはうってかわって、海港都市セイリスを舞台に魔王との知恵比べ。複数のダンジョンを股にかけ、外に出て偽金を使ったりと自由に動き回る魔王。それに対して、シビラの知略がドンドンと追い込んでいく。
 つーか、ラセルの攻撃魔法使い放題というのはチート感がすげえなあ。ラセルの出自が物語の鍵になりそうだけど。
 聖騎士セミーちゃんがかわいいのだけど。

1位 蝸牛くもゴブリンスレイヤー』シリーズ

 これも、シリーズ最初から読み直し&積ん読撃破。
 ゴブリンに生まれ故郷を蹂躙され、それからゴブリン退治を徹底して続けてきたゴブリンスレイヤー冒険者なりたての時にゴブリン退治の依頼を受けて返り討ちに遭い、ゴブリンスレイヤーに助けられた女神官。女神官の冒険者としての成長とゴブリンスレイヤーの人間的回復という二つのテーマが交差する感じか。
 とりあえず、女神官ちゃんかわいい。
 しかし、ゴブリンスレイヤーに毒されて、壊し屋化していく神官ちゃんの行く末はいかにw