もちもち物質『没落令嬢の悪党賛歌 上』

 ウェブ版と比べると、ずいぶん話の構成が変わっているな。最初の方だけでも、山賊から冒険者になって、途中でエルゼマリンの貴族を全部毒殺とか、なかなか行き当たりばったりなことをしているけど、書籍版は「革命」目的に、かなり一直線に動いている感じか。


 新興貴族のヴァイオリア・ニコ・フォルテシアは、屋敷を焼かれた上に、婚約者の王子暗殺未遂の冤罪をかけられ、死刑判決をうける。ブチ切れた彼女は革命宣言をして、その日のうちに脱獄。潜伏して、王家転覆を謀る。
 王家に、貴族たちの勢力の結節点である貴族院とその総裁クリス・ベイ・クラリノ、民意を集める大聖堂という三本柱をどう潰していくか。この巻は、前半というところで、勢力を蓄えつつ、貴族勢力を削っていくところ。「雌伏編」というか、「準備編」というか。


 ウェブ版とは違って、牢獄で使える人間をスカウトということで、しょっぱなからドランが仲間に。で、エルゼマリンに逃げ込んで、ドランと仲間達のアジトに潜伏。ヴァイオリアの血から作ったお薬で、裏通りの勢力を牛耳ると同時に、貴族連中に薬中を増やして、屋台骨を腐らせていく作戦。ついでに、違法改造空間鞄の中で植物性のお薬「対魔」製造を始めて見たり。
 さらに、ワイナリーにスライムをけしかけたり、海賊やって貴族連中の通商にダメージを与えたりと、やりたい放題。


 窮地に陥った貴族たちは、大聖堂と手を組もうと、聖女を王都に呼び出して気の弱い聖女に有利な条件の協定を押し付けようとする。そのタイミングでさらってしまおうと企むヴァイオリア一党。仮面舞踏会の会場を爆破して、その隙に聖女をさらってしまおうという作戦。
 裏の休憩室で会談しようとしていたところを襲撃。ドランがクリス・ベイ・クラリノ以下の護衛を引きつけている間に、ヴァイオリアが突入して聖女を確保。ついでに、学者などの使えそうな人間は、片っ端から空間鞄に放り込むというのがなんとも。
 フォルテシア家が開発していた銃を使ってドランが重傷を負うというアクシデントもあったが、なんとか会場を脱出。無事爆破成功。派手好きだなあw


 生物を中に入れても大丈夫な違法改造空間鞄が強いなあ。秘密兵器で内部を検める発想がないから、お尋ね者を内部に入れて無事に運べるし、スライムの大群を持っていって貴族の施設を襲撃させても自然災害にしか思われないという。


 キャラに関しては、キーブ君が完全にヴァイオリアの弟か息子状態になっているな。なんか、ものすごく世話焼いてる描写が良い。あと、薬中でキャラ立ちまくっているチェスタが、薬が抜けている時には無邪気な幼さを示すのが印象的。