『世界の艦船』2024/9号

 今回は「軍艦の推進システム」特集。現在のガスタービンディーゼルの組み合わせ機関と統合電気推進の過渡期。現在の軍艦は、だいたい複数のガスタービンディーゼルを組み合わせて搭載しているが、それぞれの特性で一長一短がある、と。ガスタービンは軽量大出力だけど燃費が悪い。特に出力を抑えた時に。一方、ディーゼル機関は高燃費だが、重い。巡行機をディーゼルにするのが燃費が良いけど、ガスタービンディーゼルの運転特性の差から、ギアでつなぐのが難しい。ガスタービンを巡行機にする場合、巡航速度の設定によって燃費が悪化する。巡行機とブースト機を切り替えるのは、機構を単純にできるけど、最高速時にデッドウェイトが発生する。そこらをどう割り切るか。
 というか、海上自衛隊ガスタービンの機種統一が必要なんじゃなかろうか…
 あとは、ガスタービンエンジンは本体は小型軽量だけど、大規模な吸排気システムが必要で、その容積がけっこうバカにならない、と。


 統合電気推進は、まだ、運用艦でトラブル起こしているのが心配だな。配電システムが重要なのかね。あとは、潜水艦のリチウム電池、爆発事故を起こしたりしないかが心配だなとか。


 末尾は商船のゼロエミッション対応と新型の帆のお話。
 なんか海運業界のゼロエミッション運動は、見えるための改革感が強いなあ。それでも、高効率になるのは悪いことではないと思うが。水素やアンモニアの使用は微妙感が。
 帆については、オイルショックの時に試されて、そのまま途絶えた試みが復活しつつある、と。軽便さから、ローターセイルが主流になりそうな感じが。あとは商船三井のウインドチャレンジャーやオランダ・エコノウインド社のヴェントフォイルあたりが実績を積みつつあるのかな。英中のウインドウイングスからまとまった受注を得ている。なんか、ここでも中国勢強そうだなあ。ゼロエミッションという点では、補助帆は大きい。


 個別論説はスウェーデンフィンランドNATO加盟と日本の捕鯨船の歴史の二本。
 前者は、沿岸防衛が主ドクトリンであった両国海軍が、NATO加盟で攻勢的ドクトリンに変換すると言うところかな。全般に次世代以降の両国の艦艇は大型化が進む。お家芸の機雷戦はエストニアとの協力で強化されそう。一方、ロシアのグレーゾーン攻撃に冠しては、NATOの動きが鈍く、独力で対処する能力が必要、と。
 今回は73年ぶりの新造捕鯨母船関鯨丸の出現ということで、論説一本に、写真ページで特集あり。捕鯨母船、あちこち転売された経歴があって、買ったのに使わなかった船団もあるという。第二次世界大戦前の捕鯨船は全滅して、戦後は戦時標準船改造から始まって、外国からの購入船や、戦没した第二図南丸をサルベージしたり。唯一新造されたのは1951年の日新丸のみ。
 その後、捕鯨の縮小と反捕鯨運動によって共同捕鯨、共同船舶と活動は縮小。母船もトロール漁船改造の第三代日新丸のみに。そして、現在の関鯨丸新造。


 「名艦クライマックス」はフラッシュデッカー。しかしまあ、第一次世界大戦に間に合わなかったとはいえ、273隻建造というのがすごいな。そして、それだけの数を揃えてしまったために、長らく更新が滞ってしまった、と。まあ、睦月型に片舷砲力で負けてるしなあ。第二次世界大戦でもドックの破壊作戦に投入されて自爆したり、真珠湾で最初に甲標的を発見したのはフラッシュデッカーだったり渋く活躍している。


 写真ページは、「懐かしの自衛艦」の掃海艇、「世界の艦船フォトミュージアム」の捕鯨船漁船群、「帝国海軍雑記帳」の偽装中の高尾の姿などが印象深い。モックアップ載っけて、艦橋の取り回しの検討している姿が。捕鯨母船はアフト式で中央に作業甲板を設けるのね。
 日本に寄港したトルコ海軍のコルベット「クナルアダ」が印象深い。LCSのフリーダム級のような艦橋前面のデザインが印象深い。というか、今時、2000トン級はコルベットなのか。
 NATO海軍の演習に参加しているスウェーデン艦艇の独特な迷彩が印象深い。
 民間船では、日本サルヴェージの新海難救助船「航洋丸」の紹介ページが2ページ。後部作業甲板が広々としてるなあ。