『世界の艦船』2020/9号

世界の艦船 2020年 09月号

世界の艦船 2020年 09月号

 特集は、新造イージス艦の「まや」。ちょっと時間があいての最新鋭艦だけに、イージスシステムのベースラインも最新で、弾道ミサイル防衛と艦隊防空を同時にやっても処理能力が落ちないとか、CEC(共同交戦)の機能が盛り込まれているとか。
 ま、イージス艦や艦隊防空、弾道ミサイル防衛に関しては、頻繁に特集が組まれているだけに新味はないなあ。
 船としての特徴として、舷側に高さ1メートルほどのRCSスクリーンを設置して、各種擬装品や武装が遮蔽されているなど、かなりステルス化が推進されている。
 また、巡行用の推進器をガスタービン発電機とモーターにしたCOGLAG形式の推進様式となっていて、発電器の出力は、他のイージス艦の巡行用ガスタービンの出力の1/3になっている、と。出力がさがった分、最高速力は落ちている。護衛艦は基本スピード重視だから、ずいぶん思い切ったなあ。搭載装備への電力余裕が大きくなって運用が柔軟にできるとか、対潜戦でもいろいろできるかもという話。


 世界のイージス艦ラインナップも、オーストラリアのホバート級がプラス。韓国のも、もう10年選手か。そして、3隻増やす予定。個人的にバサン級の屏風アンテナ構造は、ちょっと許せないなあ。同じメーカでもノルウェーのフリチョフ・ナンセン級の塔型構造はまだアリの方向なんだけど。そもそも、フェイズドアレイレーダーの平面アンテナが普及してから、軍艦のデザインがかっこ悪くなった感。


 カラー写真ページは、ヨーロッパ方面の「バトルトップ2020」演習、やNATO第2常設水上部隊とチュニジア海軍の合同演習、イタリアの新哨戒艦パオロ・タオン・ディ・レベルの公試、新さるびあ丸のデビューと先代の引退の話題など。
 バトルトップの写真、各国掃海艇のデザインの違いが興味深い。あと、冒頭のVLS非装備のフリゲイトはどこのだろう。チュニジア海軍の哨戒艦シュファクスのデザインもおもしろい。ヨーロッパ系の哨戒艦、こういう前がでかいデザインが多いなあ。オランダ製か。
 アレなデザインで注目されていたイタリアの新哨戒艦も、公試が進行中。どうみても、艦橋正面のデザインがもうちょっとどうにかならなかったのかいという感じしかしねえ。あと、オランダの新型フリゲイト構想の塔型構造物も。


 さるびあ丸は、三代目のデビューと二代目の引退のお話。
 三代目はスマートな感じの船だなあ。青と白の波模様がその印象を強くさせる。あの模様、全部直線で構成されているという話。客室の宿泊設備なども。
 個人的には、二代目好きなんだよなあ。三層の展望デッキに、丸い船尾。古き良きデザインというか。


 連載の多田智彦「現代の艦載兵器」は対潜ロケット・ミサイル。対潜ロケットランチャーといえば、ロシア艦のトレードマークだったけど、最近の船には搭載してないんだよね。垂直発射の対潜ミサイルがメインに。弾頭は短魚雷。
 白石光「名艦クライマックス」はドイツ巡洋戦艦シャルンホルストによるグローリアス撃沈。視界の悪い北海・バルト海で短距離での手数重視か。時代に置いて行かれた構想だよなあ。なんか、グローリアスの艦長がアレだったという話だが。


 米田堅持「50年を迎えた海上保安庁の潜水士制度」は、文字通り沿革のお話。1955年にいったん、潜水士の養成がはじまるが、死亡事故が発生して、中止に。その後、1967年から再始動して、1970年に公式に運用開始。「訓練でできないことはやらない」というのは、割と大事かもなあ。
 なかなか訓練が厳しくて、「海猿」ブーム以降は、人員の獲得に苦労しているとか…


 海事関係のニュースでは、アメリカの揚陸艦ボノムリシャールとフランスの攻撃原潜ペルルの火災事故が触れられている。今年は大型艦船の火災が多いな。コロナで作業が混乱している影響かね。どちらも、詳報は先のようだ。どっちも、割と再起不能っぽいけど。中国の075型強襲揚陸艦の火災は、見た目ほどではなかったのかなあ。最近、、公試が始まっているようだが。
 そういえば、ロシアのアドミラル・クズネツォフの火災ダメージはどうだったんだろう。