藍田ひびき『悪役令嬢ってのはこうやるのよ』

 枕営業も、噂を操作したライバル蹴落としもやる、悪徳芸能会社の女性社長が、暴漢に襲われて死亡。その後、異世界転生。で、ほどよく悪いポジションと、異世界の神様に、物語の悪役令嬢のポジションに放り込まれる。
 しかし、悪役令嬢なら悪役令嬢らしく、「ヒロイン」も、小僧どもも叩き潰してやると動き出して…


 家庭を顧みない権力亡者の父親が支配する家庭で、心の支えだった母親を失って荒れる。で、愛情を婚約者たる王子から受けようとへばりつくが、まだ幼い王子はそれを受け止めきれなくて、距離ができる。なかなか、悪役令嬢の生い立ちが不幸だな。で、どうしても得たい愛情が、「聖女」に流れて狂乱するわけだが、大人の記憶を持つ転生悪役令嬢はそんな不安定さとは無縁で、ヒーローもヒロインも叩き潰して、自分がトップに立つ気満々で…


 まあ、召喚された「聖女」の評判の拠って立つところを知っていれば、出し抜くのはぬるゲーじゃあるわな。手洗いうがいの衛生管理、患者の隔離、免疫活性化の薬草生産などの対策を、一つの村で実験した後、父親経由で国中に広げていく。
 結果として、疫病対策で呼んだ聖女の立場が浮いてしまう。
 さらに、力を扱う訓練に時間をかけた結果、余計に遅れてしまう。


 攻略対象たちは、「聖女」にかかずらわっているうちに、無責任な応援に溺れて堕落、求心力を落としていく。それに対して、主人公は聖女の評判を貶めるような小説を出所が分からないように準備して広めさせたり、「聖女」が養子に入った子爵家の財源を潰したり、公開治療で暴動を扇動したり、せっせと足元を崩していく。
 最終的に、聖女は引きこもりからの、子爵家の庭師と駆け落ち。


 王太子と側近連中、弟だけは聖女が庭師と繋がっているのを見せられて寝返り、残りの側近はぜんぶ解雇からの廃嫡ないし左遷。で、王子はまわりを主人公の手の物に固められて傀儡化。完全に心を折られてしまう。
 「断罪」の前日に執務室に乗り込んで、攻略者連中を叩き潰すクライマックスが痛快だなあ。
 あと、本では聖女の末路がずいぶんエグい方向になっているな。ウェブ連載では、駆け落ちしたのを囲い込んでいるだけだけど。