フランソワーズ・デポルト『中世のパン』読了

中世のパン

中世のパン



中世フランスのパンについての概説書。生産・生産者・組織・価格など、基本的な情報が網羅されている。
が、どうにもイメージが違う。
本書では、小麦の生産の拡大、小麦の食料としての重要性が、強調されている。
しかし、近世低地地方の農業について、ほんの少しとは言え、かじった身ではどうにも納得できないものがある。
低地地方の農業生産からすれば、ライ麦の重要性はかなり大きかったはずだと思う。
フランスと低地地方の気候風土の違いのせいなのかも知れないが。


また、先に読んだ舟田詠子の『パンの文化史』が描く世界との違いも気になる。
これは農村部のフィールドワークと都市部の中世文書という、元になった資料の差が大きいのだろうとは思うのだが。
本書でも多様性は指摘されているのだが、舟田の書のような多様性がある世界にはたどり着いていないように思う。
中世の都市の史料を利用するかぎりは、どうしてもそうならざるを得ないのだが、そこを突き抜ける手立ては何かないのだろうか。そこが問題だ。
考古学的な成果からは何が読みとれるのか、そこ重要になると思うのだが。