- 作者: 桂木洋二
- 出版社/メーカー: グランプリ出版
- 発売日: 2004/08/01
- メディア: 単行本
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第一部は、ヨーロッパにおける自動車産業の草創期について。ダイムラー、ベンツらドイツの初期の開発者と、プジョーやパナールなどフランスのメーカーの相互作用について。また、自動車の発展へのレースの影響など。二部はアメリカ。草創期から大量生産によるフォードの覇権、フォードの衰退とGMの躍進。ビッグスリーの形成と寡占化にともなう自動車産業の爛熟。第三部は日本の自動車産業の草創期から。海外からの技術の導入と自力開発の試みとその難航。戦後の自動車産業と技術の発展をトヨタを軸に。70年代の環境規制から、日本車が世界の自動車生産のトップにたち、その後現在に至るまで。興亡が激しく、実に面白い。
個人的な関心は、近代の大規模な工業がいかに発生したか。特に資本と人員をどう集約し、組織したか。戦争・軍隊と近代産業。本書では戦争と自動車産業の関係に関してはほとんど触れていない。この点は、別の本で追っていくべきこと。各国で、保護自動車制度など、軍用の車両確保のために、民間での保有を援助する制度を作っているが、これはどのような影響をもったのだろうか。
一般に、自動車産業の歴史とトラック生産・バイク生産の歴史は別立てになっているが、なぜなんだろう。このあたりも、ほぼいっしょと言えば、いっしょだと思うが…
本書の参考文献にもあげられいる『ドイツ自動車工業成立史』の書評で、
第一の特質は産業構造論的視点であり、「鉄道を主、自動車を従」とする産業構造からその逆への産業構造への転換を機軸に20世紀世界経済史をとらえようと壮大な研究プランを提示していることである。すなわち著者は「石炭―鉄―鉄道」を中心とした世界資本主義研究から自動車工業を主軸とした世界経済史への視座の転換を提唱している。
………
氏は新興工業を「電気工業、化学工業」と「ミシン製造業、自転車製造、内燃機関製造業、そして自動車工業など」に分け、後者を「第二の新興工業」と呼んでいる。
とある。
本書が『ドイツ自動車工業成立史』の影響を受けているのかもしれない。しかし、初期に自動車生産に参入した企業・個人にミシン、自転車、内燃機関の生産業者・技術者が多数含まれているのが興味深い。どれも精密な部品を多数必要とすること、多数の消費者向けに量産することあたりの共通点があるのだろう。
自動車工業の歴史に関する雑誌論文・記事についての書誌情報:
大島隆雄「ドイツ自動車工業のパイオニアW.マイバッハに関する第1次史料の紹介」『愛知大学経済論集』140号 1996
長尾克子「繁栄の礎--日本工作機械工業の歴史(第31回)自動車産業の誕生と発展--ドイツ,アメリカ,日本」『機械技術』Vol.49no.1 2001
初期のヨーロッパ自動車メーカーと関係者
- ドイツ
- フランス
ダラック、ファルマン、サムエルソン、ヴォアザン、デコーヴィル
- イタリア
ファイアット、ランチャ、アルファロメオ、イターラ、イソッタ・フラスキーニ
- イギリス
ディムラー(ダイムラーエンジンのライセンスから)、ウズレー(羊毛刈機)、ハンバー(自転車)、ローバー(自転車)、ライレー(機械)、クロスレー(機械)、スウィスト(ミシン・自転車)、シンガー(自転車・オートバイ)、サンビーム(自転車)、ロールスロイス、オースチン
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