- 作者: 盛本昌広
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2008/05
- メディア: 新書
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第一章から第三章にかけては、戦争にどんな木材が必要とされたのかを明らかにする。陣地や城の構築、舟橋、攻城用の資材、軍船、旗ざおや槍の柄、松明などなど、戦には膨大かつ多様な木材が必要とされる。また、それらがどこから、そのように集められたかも明らかにする。
後半の二章は、戦国大名を中心の森林資源の管理について明らかにする。各種木材の徴発を朱印状によってしか行なわないことで、無秩序な森林資源の利用の抑制、地域による抵抗、「立山」「立野」による資源利用者の制限など。熊本県の阿蘇にも「立野」と言う地名があるが、これも森林資源の管理と関係があるのだろうか。最後は、寺社などを中心とする植林の活動について。中世には植林はなかったとする通説(?)を批判する。
最後に、これらの資源保護にもかかわらず、戦争に伴う消費で森林資源は枯渇しつつあり、それに伴う植生の破壊と洪水などの災害の拡大、土壌流出による堆積活動の進行と地形の変化が指摘される。
参考文献を見ると、著者は90年代前半から、森林資源をテーマに研究を続けていたようだ。それが、門外漢にも手をとりやすい形で公表されたのは喜ばしい。ただ、主要な情報源がほぼ北条氏領国に限られていて、「戦国合戦」は少し大きく出すぎたような気がする。個人的には、非常におもしろいが、こんな意見もあったりする。ないものねだりのように思うが、表題が罪作りだよな。