水俣病に関して患者の調査をしないことは、実は明確な法律違反である。食品衛生法第58条(旧法第27条)は食中毒事件が起きたら「保健所長は(中略)調査しなければならない」「保健所長は(同)都道府県知事等に報告しなければならない」「都道府県知事等は(同)厚生労働大臣に報告しなければならない」と定めている。この調査結果を基に、誰が食中毒患者かが判断され、食中毒患者数が決まる。
水俣病はだれもが認める食中毒事件だが、このプロセスが全く行われていないのだ。忘れてしまったためか、多数の患者がさらに発見されそうなのを避けたいのか。理由は定かではない。
法定の調査による基本的情報が欠如したままでは、権力を持っている方が有利な、不公平な和解になりやすい。実際、今回の和解の対象者を県も国と水俣病患者と見なさないが、大学などの調査結果によれ、その多くは明確に水俣病患者である。このような事態は、明らかに公序良俗に反し、人権問題である。
いや全くもって、その通り。
まともな調査を避け続け、さらには紛争を引き延ばして患者が力尽きるのを待つやり口がまかり通っているのだから。どこが法治国家なのやら。本当なら70年代に調査を行っておいてしかるべきだった問題だ。