文明を変えた植物たち コロンブスが遺した種子 (NHKブックス)
- 作者: 酒井伸雄
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2011/08/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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トマトにしてもそうだけど、新大陸産の植物って、ものすごくユーラシア大陸の食文化に根付いているよなあ。トウガラシなんか、インドから東南アジアとか、中国四川、韓国なんかに広がっているし。あのあたりの地域の食生活が、トウガラシ以前から激辛だったかというとそうでもないような節があるし。小菅桂子『カレーライスの誕生』にリンスホーテンの『東方案内記』が引用されているが、16世紀末インドの「カレー(カリール)」は酸味がある料理だったようだし→http://d.hatena.ne.jp/taron/20110728#p2、味覚のあり方を相当に変革してしまったと言えそうだ。
あと、トウモロコシの普及については、雑穀食をしていた地域に普及しているのが興味深い。モロコシとか、ヒエとか、粟を代替する形で、ユーラシアの食文化に浸透していったのではなかろうか。ブラックアフリカとか、北イタリアとか、中国の北部とか。
以下、メモ:
もう一つの理由は、パラゴムの種子の生存期間がきわめて短いことである。種子は成熟すると自然に木から飛び散るが、二週間後にはほぼ半数が、一ヶ月もするとほとんどの種子が発芽しなくなってしまう。仮にブラジルから種子を持ち出すことができたとしても、ブラジルからイギリスまでの航海日数と、種子の寿命のどちらが長いかという問題が残る。この時までにも、密かに種子をイギリスへ運び出そうとする試みが何度となくおこなわれていたが、いずれの種子も発芽することなく、試みはその都度失敗に終わっていた。p.78
ブラジルのゴム持ち出し禁止が有効だった理由。まあ、こんな理由でもないかぎり、種子なんて、普通に持ち出されてしまうわな。
この当時の砂糖はサトウキビの原産地であるインドで生産されており、その輸入に際しては、荷物がイスラム諸国を通過するたびに、高い税金を払わなくてはならなかった。そのため、砂糖がヨーロッパに到着したときにはきわめて高価になっており、食料品店ではなく薬屋で扱われるほどの貴重品であった。p.105
ダウト!!
もうこの当時は、地中海世界にかなりサトウキビ栽培は普及していた。イスラム圏からキリスト教世界に導入されている。16世紀には、スペインやアゾーレス諸島などの大西洋の島々でも、生産を開始している。インドから持ってくるって、胡椒じゃないんだから。
参考文献であがっている、川北稔の『砂糖の世界史』にも、そのあたりの記述はあったはずだが。
コショウ、カラシ、ショウガなど古くから使われている香辛料には、トウガラシほどの辛さがない。トウガラシが食文化に溶け込む以前、コショウやショウガの辛みを利用していたインド料理の味は、今ほど辛くなかっただけではなく、かなり違った風味をしていたに違いない。同じことは、コショウやサンショウを使ってキムチを漬けこんでいた、朝鮮半島の料理全体についてもいえる。朝鮮半島の辛い料理もインドのスパイスがたっぷりと利いた料理も、トウガラシを料理の中に取り込んだことによって、現在の食文化の形が定まったのである。p.144
本気で朝鮮半島の食文化は知らないんだけど、トウガラシ以前には、漬物に香辛料を入れていたのだろうか。なんだかんだ言っても、胡椒は舶来の香辛料だし、気軽に漬物に使えるとは思えないのだが。胡椒にしても、比較的安価なスパイスになるのは、18世紀以降、ヨーロッパ帝国主義諸国がプランテーション栽培をするようになってからなんじゃなかろうか。18世紀以降は、東西貿易におけるスパイスの存在感がなくなって行って、そのあたりはあんまり扱われなくなるのだけど。