日本の出生率を上げようよ、平たく言うと子供生もうよ(山本 一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース

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 そもそも、産経の駄文に膝を打っている時点でダメなんだよな。フランスの事例を引いているけど、「日本的家族主義」を推進する産経と「家族」という枠組みを捨て去りつつあるフランスでは、そもそもイデオロギー的な基礎が全然違う。だから、デリカシーのない議論になってしまう。「子育てはたいへんだけど楽しい」程度のメッセージしか出せなくなる。
 産経の駄文なんざ、自分たちを変えるつもりはないけど、お前たちは改心して産めよ増やせよって言っているだけだしな。話にならん。内面に介入するようなやり口は論外。産経って、そもそも抵抗勢力だし。


 んで、少子化問題は、結婚あるいはカップル形成の問題と子育ての費用と責任を誰が負うかの二つの問題に切り分けることが出来ると思う。保育所の整備や教育の無償化ってのは、後者の問題。いったん結婚すれば、その手のインセンティブが機能すると思う。結婚した後で、子供が一人とか、産まない理由に、高等教育の費用を負担しきれないというのは結構大きいだろうから。
 一方で、現在の日本の少子化問題は、その前の段階の結婚の所がボトルネックになっているんだよな。以前、公務員関係でバイトしたことがあるけど、正規職員と非正規職員で結婚率に歴然とした差があって、正規職員側では、草食系の人でも結婚している例が多くて、結婚の問題ってのは優れて社会的な問題なんだなと感心したことがある。安定したポストをを確保しやすい社会になれば、ある程度自然に婚姻率は上昇するのではないかという見通しを持っている。内面に踏み込んで結婚しない、子供がいない奴はダメとか、独身税みたいな負のインセンティブ、あるいは結婚に対するインセンティブは、そのような安定したポストの代用品でしかないと思っている。まあ、発達障害者である私は、安定した雇用を得たから結婚するかと言えば怪しいが。
 ことほど左様に、結婚の問題は雇用問題、貧困問題、そしてさらに言えば中産階級の没落であるといえる。婚姻率を増やすには、安定した雇用が最大の対策。つまり、少子化問題の一番の要点は若年雇用の問題であり、これはグローバル化の社会の中ではものすごく解決し難い問題だと言える。歴史人口学の成果からしても、一定の生計基盤を確立してから結婚が視野に入ってくるというパターンは一般的なもの。で、現在では非正規雇用が主体で、正規雇用を確保した人は自分の雇用を守るためにワーク・ライフ・バランスを崩して仕事に傾注することを強いられる。この状況では、婚姻率の低下、晩婚化という少子化へつながる状況は悪化しこそすれ、改善することはないだろうと思う。まあ、この若年雇用の問題って解決の使用がないから、インセンティブで子供を産ませようとする動きになるんだろうけど。
 あと、十分な年収を稼げる職業に就けないこと自体が、「社交」の範囲を狭めて、出会いの可能性を狭めるという問題も重要かもな。これは、ダグラスの『儀礼としての消費』からヒントを受けた考えだが。実際、山本一郎氏も、結婚してもいいと思える相手を得るまでには相当時間がかかっているわけで。「社交」の範囲が狭ければ、出会えなかった可能性は高かったのではないだろうか。そういう点で、「社交」「人づきあい」に割けるリソースの多寡というのも、かなり重要な要因なのではなかろうか。


 あとは、エマニュエル・トッドの指摘する「権威主義的な家族関係」の社会ほど少子化が進んで、女性の地位が高く仕事と子育てが両立しやすい社会はそれほどでもないという指摘は重要だと思う。東アジア諸国やドイツ、イタリアがこのような社会と指摘されている。子育て以前に「結婚」が高いハードルになっている状況。
 「あるべき家族像」や子供に対する「責任」の強調が、逆に結婚や子育てを難しくするハードルになっている。はてブのコメなんかでも、そのあたりの自縄自縛な感じは見てとれるし。気負えば気負うほど、身体が動かなくなる状況なのかもな。その中で、権威主義的な家族観を押しつけようとする「保守主義者」、親学や何やらの連中こそが、本当の売国奴、国を滅ぼす者だと思う。「家族」というものを、もっと柔らかく考えることが、対策の一つなんだがな。「親が愛情をかければ子供は健全に育つ=健全でない子供は愛情が足りない」って、どんな無理ゲーなんだよとしか言いようがない。その核の一つが産経新聞というメディアということは忘れるべきでない。産経が潰れたら、日本の将来は明るいと言っても良いと思う。


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