- 出版社/メーカー: 学研マーケティング
- 発売日: 2015/05/07
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大木毅「パウル・カレルの2つの顔:有名戦記作家の隠された半生」
パウル・カレルこと、パウル・カール・シュミットが、大戦中は外務省の幹部で、熱烈なナチエリートであったこと。戦後、それを隠して、作家「パウル・カレル」となったこと。ドイツの戦争犯罪をナチに押し付け、「国防軍潔癖神話」の形成に与したことなど。
それ以上に、「歴史」の情報源として問題なのは、実際にはなかった戦闘を「創作」してしまったことだよな。「プロホロフカの大戦車戦」という、実際にはなかった戦いを作り上げてしまった。その上で、本人・遺族が手持ちの文書の公開を拒絶していて、どの程度信用できるのか検証しようがない以上、「歴史著作」としては、まったく使い物にならないと評価するしかないよな。
歴史書のふりをした架空戦記を、わざわざ取り上げるとすれば、やはりなんらかの意図があるとしか言いようがない。
古峰文三「日の丸の翼No.46:海軍ハインケル陸上戦闘機」
海軍が導入しようとして、果たせなかったハインケルHe112の話。日中戦争開戦時、海軍航空隊には旧式戦闘機しか存在せず、中国軍の欧米最新鋭機に遅れをとっていたこと。これを補うために、He112やアメリカからセバスキーP-35の複座型2PA-B3を導入して、凌ごうとした。しかし、He112の導入計画は、チェコ危機で日本向け機体が接収・使用されたこと。さらに、ポーランド侵攻でパーツや弾薬の輸入が絶望的になったことから、一度も実戦に投入されずに終わったという。
なんか残念だなあ。
有坂純「戦史の名画をよむ:トゥール=ポワティエの戦い」
イベリアのイスラム勢力とフランク宮宰の戦い。この時代、イスラムと西欧の軍隊は、編成・戦術・装備は相似していて、ローマ末期の軍制をそのまま引き継いだものであったと。
ピレンヌ・テーゼの有効性や「暗黒時代」の使用などは、疑問符がつくが。
田村尚也『フランス電撃戦』
ドイツの電撃戦が、あれほど鮮やかな勝利をおさめたのは、ドクトリンの優越だけではなく、作戦構想のかみ合いや戦術教範の違いに由来すると。
連合軍がベルギーに進出して防御を行なうのにたいし、ドイツがその正面で戦わず、根本を絶つような動きになったこと。ドイツ軍の教範が現地での創意と迅速さを重視するのに対し、フランス軍が計画性を重視し、統制された戦闘を行なおうとした。この差が、ドイツ側に有利に働いた。逆に、計画通りの場所で噛み合えば、歩兵師団に二個砲兵連隊を配属し、火力に優越するフランス軍がガッチリと押さえ込んだ可能性は高いんじゃなかろうか。
そもそも、アルデンヌを突破して、フランス軍を大包囲する作戦が最初から構想されていたわけではないとか、戦略次元ではドイツは資源・弾薬などが不足していて長期戦を戦うことはとてもできない状況だったとか。
荒川佳夫「ブラック・プリンスvs.デュ・ゲグラン:戦士たちの百年戦争』
イギリスのエドワード黒太子とフランスの名傭兵隊長デュ・ゲグランを中心とした、百年戦争。イングランド長弓兵を核とした防御的な「モード・アングレ」と、戦略次元・戦術次元でそれを無力化したデュ・ゲグランか。
樋口隆晴「朝鮮戦争:烏山の戦い」
朝鮮戦争緒戦。北朝鮮軍の遅滞を試みて、あっという間に壊滅したスミス支隊の戦い。準備不足・情報不足の中で、あっという間に敗れてしまった。まあ、二個中隊基幹の部隊で、師団規模の部隊を相手するとしたら、よっぽど有利な状況じゃないと時間稼ぎにもならないよなあ。
手塚正巳「海上自衛隊の誕生:第二話戦犯探しと朝鮮戦争」
ミッドウェー海戦で、撃墜されたパイロットを殺害した事件の犯人探し。結局、谷川氏は庇いおおせたわけだが、なんか身内の庇い合いっぽくて、あれだよなあ。負けた腹いせに、下士官が捕虜撲殺とか、庇い立てしてどうすんだ的な。
あとは、朝鮮戦争時の掃海とか、海軍再軍備の構想とか。いきなり、護衛空母四隻とか、運用できるわけないじゃんとしか言いようがないよな。金はどこから出るのとか。
山崎雅弘「アメリカとベトナム戦争」
外国に介入する場合、進出先の政治的安定をどう確保するのか。それを米軍は完全に学び損ねたよなあ。湾岸戦争での勝利が、さらに問題点を隠して、イラク戦争になだれ込む。
戦争ってのは、勝っても負けても、次の戦争を呼んでくるんだな。