木俣滋郎『ジェット空中戦:朝鮮戦争からフォークランド紛争まで』

 うーん、微妙。
 薄くて、サクサク読めると言えば良い感じだが、内容が薄い。個々のトピックは、ネット上でも割りと簡単に入手できそうなレベル。まあ、まとまっているのに価値があるのだが。印パやイラン・イラク戦争にそれぞれ章が割かれているのは長所。
 ただ、ここの行を見て、全体的な信憑性には疑問符が。

 攻撃機が戦闘機に襲われたら狼に狙われた子羊だ。だが奇跡が起こった。運動性が悪いにもかかわらず、A4攻撃機はどうやらミグ21を撃墜した。ネズミがネコを咬むのたぐいだ。このミグのパイロットは余程、腕が悪かったと思われる。他にもう二機のミグ21が残っていた。あわやと思った時、友軍のミラージュ3が駆けつけて攻撃機を救ってくれた。p.170

 A-4スカイホークといえば、攻撃機とは思えない運動性の持ち主で知られていると思うのだが。少なくとも鈍重な飛行機と言う評価を聞いたことはない。まして、爆弾を捨てた後なら。アクロバットチームで使われたり、トップガンの仮想敵を努めたりした飛行機なのだが、ちゃんと調べたのだろうか。
 まあ、空戦の訓練を受けていない攻撃機パイロットに撃墜されているあたり、ミグのパイロットがヘボかったのは確かだけど。


 こうやってまとめられると、戦後最大の傑作機は、ミグ21なんじゃないかという気がするな。ベトナム戦争以降、全ての戦場に登場しているし。まあ、イスラエル相手には、分が悪い感はあるけど。
 あと、イラン・イラク戦争で、イラン軍が保有していたF-4やF-5などの戦闘機がどのような活動をしたのだろうかとかも気になる。

 F4ファントムは名戦闘機にはちがいないが、F5より四年も古いのだ。日進月歩の航空兵器で四年古ければその能力の差は歴然だ。イランのファントムは二機ともサウジアラビア機に撃墜された。このようにイラン・イラク戦争は一見、無関係と思われる周囲の国々にいろいろな波紋をなげかけたのである。p.185

 イラン・イラク戦争のとき、イラン機がサウジアラビアに領空侵犯を行なって撃墜された話。しかし、F-5がF-4を撃墜するイメージって、全然ないんだけど。アビオニクスで歴然とした差があるだろう。この当時、イラン軍戦闘機のアビオニクスがまともに動いていなかった可能性は高いけど。F-5がファントムに対して歴然と優位ってことはないんじゃないかなあ。