本日は、学園大で行なわれた、市民シンポジウム「熊本市役所花畑町別館を残してまちと共に生きる建築に」に出撃。解体と建て替えが検討されている、花畑別館の歴史的な位置づけとどのように生かすべきかをさぐるもの。近代建築のリフォーム実績がある鹿児島大の鰺坂教授の存在が、このシンポジウムを有効にしたと思う。元のものをなるべく残すのが、コスト削減になるし、工期も短くできる。そうなると、熊本市役所がどの程度の床面積が欲しいかって話になるような。花畑別館はリフォームして、その上で、旧議会棟に容積率を移して、建て替えるって手もありうるわけだ。
 日本で、住環境や歴史が「公益」として確立されていないという指摘は、その通りだよなあ。「リバタリアンの天国」ってのは、こと不動産に関しては、徹底的に当てはまる。パリにしても、ニューヨークにしても、建物単位での規制が行なわれていることを考えると、レベルの差が。これで「伝統」とか口走る人間がたくさんいるのがな。
 そもそも、熊本は西南戦争、太平洋戦争、白川大水害と三度の戦災・災害で、古い建物があまり残っていない。「城下町」の名前を強調する以上、その歴史的な蓄積は注意深く保存していく必要があると思う。熊本城の一点豪華主義では、バスで乗り付けて、そのまま次の観光地へと行かれて、波及効果が低い。市街地に広く拡散させるためには、「城下町」として、近世まではさかのぼれなくても、歴史的な実質を見せていく必要があると思うのだが。「都市間競争の時代」だからこそ、古いものを残していく必要がある。新しいものをつくっていく競争では、端から勝ち目がないんだから、古いもので価値を作っていく必要がある。古いものをリフォームすることで、使う金を節約できるなら、なおさら良い。そのあたりは、発想の転換が必要だと思う。
 あと、市中心部で、太平洋戦争の空襲を生き延びた、ほとんど唯一の建物というところも重要だよなあ。