湖山真『聖剣と魔杖の多重継承』

聖剣と魔杖の多重継承 (一迅社文庫)

聖剣と魔杖の多重継承 (一迅社文庫)

 積みラノベの山が減って、多少余裕が出てきたので、新規開拓。なにやら、編集の人が、ずいぶん推しているので、興味を持った次第。男女が鎖でつながれてしまって、すったもんだ、というのは散見する設定だが、ファンタジー世界でやると新鮮に読める。
 人間と「魔族」が対立する世界。人間至上主義の教団、南十字教団に属する「勇者」である主人公は、かつての勇者と魔王の魂を宿す「双魂者」として見下されていた。ある、人間の村を破壊する命令を受け、叛逆し、要塞を転用した牢獄に投獄された。その監獄要塞が、セイレーンの騎士に襲撃され、手違いで魔法の鎖で結び付けられることになる。
 要塞からの逃避行、セイレーンと人間が共存する村での生活、その村を情け容赦なく破壊する南十字教団の歪みに直面する。最終的に、教団が派遣した勇者エセルウルフとの戦いの中で、魔王と勇者の両方の魂に目覚め、魔族と人間が共存できる社会を生み出そうと決意する。
 主人公の心の動きや、最終的にどういう社会を作りたいかという流れは説得的だし、世界観も良い。南十字教団が、転生先を望み通りにできる「転生術」で勢力を伸ばした。あるいは、魔族側の様々な種族。いろいろと魅力的。一方で、エセルウルフとの戦いの中で魔王と勇者の魂の両方に目覚める展開は、少々、唐突感があったかなと。もう少し、前段階からネタ振りがあっても良かったような。


 とりあえず、セリアさんの清楚さと一方での隙の多さが魅力的だったな。有翼種ヒロイン、良いです。