『[歴史群像]太平洋戦史シリーズVol.69:完全版妙高型重巡』

 今はなき、ダイエー下通り店で、バーゲンブックで手に入れた本。個人的には、日本の重巡のなかで、一番好きなクラスかな。高雄型は艦橋の形状が好みじゃないし、最上型はちょっとあざとい感じが。すっくと立った艦橋構造物が良いんだよな。
 前半が、写真による艦容の変化の追跡と、イラストによる各艦の変容。後半が、条約型巡洋艦の出現の流れや妙高クラスの技術的特徴、改装の詳細、戦歴など。機関の解説がさっぱり理解できなくて、ちょっと落ち込む。
 最初の1万トン級重巡として、試行錯誤や途中の仕様変更などもあり、竣工時の妙高級はかなり欠陥だらけだったという。舷側の固定魚雷発射管によってスペースが圧迫され、居住スペースが不足していた。主砲の弾庫が使いにくかった、排水量が増加し強度の限界まで達していたなどの問題があったという。また、巡航時には、内軸を遊動状態にする形式は、全速発揮までに時間がかかるという問題があった。二回の改装で、これらの問題への対処が行なわれた。
 妙高級は、全艦が参加したインドネシア侵攻作戦、那智と摩耶が参加したアッツ島沖海戦、ブーゲンビル島沖海戦などに参加している。しかし、これらの戦闘の詳細を見ると、遠距離砲戦って、砲弾全然当たらないんだな。一晩、撃ちあうと、弾薬が欠乏してしまうが、命中弾は数えるほどか。魚雷も、当たらないんだな。
 アッツ島沖海戦では、優位な日本艦隊が、消極的な遠距離砲雷戦に終始し、取り逃がす。これ、後の展開をみると、刺し違えても、アメリカの水上戦力を殲滅しておくべきだったのではなかろうか。
 ブーゲンビル島沖海戦では、レーダーとCICを使いこなしたアメリカ軍が、優位に夜戦を進め、日本側は軽巡1、駆逐艦1を失う負け戦となった。その中で、妙高と羽黒は、アメリカの大型軽巡4隻と互角に渡り合った。しかしまあ、大型巡洋艦多数とはいえ、重巡って、15センチ砲搭載艦を圧倒できる船として設計されたわけだから、当然と言えば当然なのではないかとも言えそうな。