『【完全版】図説ドイツ装甲部隊全史:1918-45』

完全版 図説・ドイツ装甲部隊全史

完全版 図説・ドイツ装甲部隊全史

 この本のカラー写真って、当時からのカラーなのだろうか、それとも後に着色された? ジャーマングレーがずいぶん黒いのが印象的。ほとんど真っ黒な車両も。こういうのは、どれがどうなのか、書いといて欲しいな。


 第一次世界大戦からのドイツ機甲部隊の歴史、運用や組織についての解説、戦車のマーキングや類別・迷彩、戦車兵の軍装、そしてラストは解説と資料。
 部隊記号の解説が便利。よく戦史で紹介される地図を見るときに便利そう。あと、装甲師団の編成のうつりかわりとか、独立重戦車大隊の編成とか。45年の戦車師団のボロボロっぷりが、涙もの。あと、戦車を運用するには、相当規模の支援組織が必要なのだなと。
 マーキングや迷彩の変遷、車体番号の意味なんかも、プラモや戦場写真を見る上で有用そう。軍装には、あまり興味がないが、1/35フィギュアの「マップケース」が書類入れだったとか、携行品の紹介は興味深い。このくらいなら、背負って運べるかな。


 129ページ以降の、文章記事も興味深い。
 国防軍の上級士官が、ヒトラーから多額の現金や土地を与えられて、飼いならされていた状況。グデーリアンが、ヒトラーのお気に入りで、敗戦でも温情処置を受けたり、暗殺未遂の直後には参謀総長に任命されるなど、子飼い的な扱いだったこと。国有資産の切り売りを受けた話。そして、末期に、ヒトラーによる損害を増やす作戦指揮の片棒を担ぐ形になったこと。
 あるいは、ドイツ戦車はなぜディーゼルエンジンを導入しなかったのかとか、重戦車はなぜ消えたのかとか。英米独と、ガソリンエンジンなんだよな。日本も、五式中戦車は、航空機用エンジンをデチューンしたものを積んでいるし、大出力のエンジンが技術的に難しかったんじゃなかろうか。
 巻末の主要作戦別参加戦車数一覧もおもしろい。ポーランド戦では大半が1、2号戦車で占められていたこと。フランス戦では、1号戦車が減った一方で、3、4号の配備が進んでいない。チェコ製戦車をあてがわれた、軽師団からの昇格組のほうが戦力として上だったんじゃなかろうか。ツィタデレ作戦時が、一番戦力的に充実していたのかな。ラインの守り作戦でも、けっこうまとまった数の戦車がいるなあ。などなど…