川崎まなぶ『日本海軍の航空母艦:その生い立ちと戦歴』

日本海軍の航空母艦―その生い立ちと戦歴

日本海軍の航空母艦―その生い立ちと戦歴

 旧海軍の空母について、その艦の建造が計画された背景なども含めて、紹介する本。龍驤までの黎明期、蒼龍から雲龍までの高速空母群、そして、戦争以前から検討されていた改装空母群の三章に分けて、解説。最後の一章は、空母対空母の戦いの姿を、艦爆隊の視点から描く。


 こうやって、計画段階から評判まで含んで見ると、なかなか意外なトピックがたくさん。つーか、「完全に満足できる軍艦」なんて、できないんだな。鳳翔から赤城、加賀あたりでの試行錯誤の蓄積が、第二次世界大戦の空母機動部隊の運用の基礎になった。
 龍驤が小型の割りに搭載機数が多くて使い勝手の良い艦と評価されていたり、最も活躍した翔鶴クラスが設計や建造の不慣れ、飛行甲板の短さ、艦橋の配置などから、評価が低かったなど、なかなか意外な見方。あと、雲龍型って、全く活躍していないけど、正規空母を三隻完成させて、さらに二隻がかなりできていたと、当時の日本にしては、頑張って量産したなあという印象。補助艦改造の軽空母の意外な活躍や貨物船改造の空母が、飛鷹クラスを除いては、航空機輸送が天職だった状況。空母としては低速でも、対潜護衛作戦に従事させると、他の船より高速ってのは、困った話だっただろうな。ドイツ客船シャルンホルストを改装した神鷹、2万トンも排水量があったのか。早く完成していれば、活躍の余地があったかもなとか。


 第四章は艦爆隊の戦い。真珠湾、ミッドウェー、第2次ソロモン、南太平洋の各海戦で、どのように戦ったかを、生き残った搭乗員の話を中心に再構成している。空母機動部隊が、搭乗員を確保するのに四苦八苦していたのが印象的。空母に発着艦できる人員は限られている。で、軽空母から搭乗員を取り上げたり、新規に訓練した人員を乗っける。しかし、ミッドウェー以降は、消耗が激しくなり、やりくりが一層難しくなったと。
 艦爆や艦攻の搭乗員の消耗の激しさも印象的。アメリカの空母機動部隊の輪形陣に攻撃を仕掛けると、攻撃側もただではすまない。半分くらいは撃墜されるし、戦果確認も難しいと。
 あとは、作戦のドタバタぶり。飛行機を飛ばすにしろ、下ろすにしろ、時間がかかる。さらに、爆弾や魚雷の搭載が大変。情報がなかなか入ってこないと。