前野ウルド浩太郎『孤独なバッタが群れるとき:サバクトビバッタの相変異と大発生』

孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

 同著者による新しい本が出た機会に、今まで読み損ねていた本書を撃破。
 モーリタニアでフィールド調査をやっている姿を、ネットの連載で読んだだけだが、そこに至る前に、どんな修行をしてきたかというお話。山ほどのサバクトビバッタを飼育し、観察、実験を行ってきた基礎の上に、フィールドでの様々な実験のアイデアが出てくると。先に読んだ『湿地帯中毒』の人と比べると、もともとのマニア成分は薄めなのかな。
 なんか、サクサクと読める本だが、いろいろと目いっぱいすぎて、頭の中では整理できていないな。


 サバクトビバッタは、普段は緑色の孤独相で分散して暮らしているが、大量発生の時は黒い群生相となって、長距離を飛びまくり、集団で植物を食い荒らす。サハラ砂漠周辺からインド亜大陸に至る地域の農業生産に大きな影響を与える。
 その、相変異がどのように起きるかを解明するのは、バッタ類の研究において、大きな課題。
 卵やそれぞれの個体の大きさを細かく分けて、分析。孤独相は小さい卵を多数生み、群生相大きな卵を少なく生むことで、種内の競合に対応している。それらの観察と条件を変えた操作実験の積み重ねから、通説となっていた「相蓄積」や、卵塊を保護する泡から供給されるフェロモンが群生相を導くという「泡説」などの説を修正する結果を得る。
 卵から卵黄を押し出して、減量する、なかなか無茶な実験から、卵の大きさ=卵黄の量が、形質に大きな影響を与える。体色の遺伝。メスがいつ、どのような程度の込み合いを経験すると、群生相に至る大型卵を産卵するかの実験。群生相を誘導する接触の実験や光の感受性の実験などなど。
 様々なサバクトビバッタの性質を明らかにする。
 そして、最後に、アフリカ、モーリタニアに渡り、フィールド研究に身を投じる。昆虫研究の訓練を受け、実際にフィールドに出てくる研究者は少ないと。確かに、なかなか大変そうだしな。様々な研究支援資金を得ての渡航
 サバクトビバッタの研究は、1960年代の黄金期からとまっているのが現状とか。
 しかし、実際にフィールドに出てみたら、今度は大干ばつで綺麗さっぱりいなくなってしまったというのも、また運命の悪戯だな。このピンチをどう切り抜けたかは、新しくでた新書に書いてあるだろう。


 つーか、ずっと昆虫に触れ続けると、アレルギーになるのか。殻のキチン質がやばいんだっけか。エビとか、カニでも、よくあることだから不思議ではないか。