水野良『グランクレスト戦記7:ふたつの道』

 ついに、ミルザーとテオの決戦。覇道と王道のぶつかり合い。互いに意識しあっているのが微笑ましい。


 システィナを解放したテオとシルーカは、統治の整備もそこそこに、エーラムに大公暗殺犯の黒魔女ヤーナを護送することに。で、エーラムでのシティアドベンチャー。結局、エーラムの指導層が、混沌の時代を維持したい勢力で占められているわけか。そいつらが、裏で暗殺を支援した。逆に、メレテス一門や大学の学長は、穏健派。
 あとは、今まで名前ばかりで、内容が全くされなかった聖印教会の正体とか。プリシラが教祖の娘。しかし、教団の中枢は、エーラムの魔法師協会にのっとられているとか。そして、ヤーナは、自らアビス界に引き込まれることで、壮絶な自殺を決める、と。


 第2章以降は、アルトゥークへ戻って、ミルザーとの決戦。
 まだ、アルトゥーク条約の君主たちの支持を固め切れていないと見たテオは、ミルザーを討つことで、盟主の資格を得ると宣言し、ミルザーとの討伐を試みる。
 アルトゥークに侵入したテオ軍は、常闇の森を占拠。さらに、各地に呼びかけて、義勇兵の大軍を編成する。これに対して、ミルザーは、一角獣城への篭城で応じる。しかし、後背地であるダルタニア・スタルクの両国では、テオの従属君主による反乱の扇動で、混乱していて、援軍が出せない。ヴァルドリンドも、他の方面での戦闘によって、最小限の戦力しか後詰に出せない。さらに、条約の諸君主の軍勢も集結し、絶体絶命の状況に陥ったミルザーは、討って出て、テオを直接対決で倒すことを試みる。しかし、聖印の力を高め、さらに鍛錬を積んだテオの鉄壁の守りを崩せず、最終的に暴れまわった体力の消耗もあって、力尽きる。最後の暴れっぷりが、すごいなあ。ワンマンアーミー、ミルザーの面目躍如であると同時に、最後の輝き。
 結局のところ、ミルザーの勝つチャンスは、最初にテオが常闇の森から出てきたとき。まだ、集めた民兵の統制が怪しい段階だったわけだ。寄せ集めの軍勢に精鋭部隊が突入するというのは、大軍への大勝パターンだよなあ。そこで、「らしい」行動を取れなかったのが、あとに響いた。


 とりあえず、ハマーンの裸の女王様が印象的だったな。あとは、鷹揚すぎるセルジュ・コンスタンス伯。


 外伝は、アイシェラがアウベストの養子になった直後の話。女性に翻弄されまくる、アウベストさんといった感じだなw