『丸』2020/4号

丸 2020年 04 月号 [雑誌]

丸 2020年 04 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/02/25
  • メディア: 雑誌
 特集は、日本軍の双発戦闘機、屠龍と月光。
 1930年代後半、日中戦争初期に、日本軍は爆撃機を護衛して長距離を進出する護衛戦闘機の必要に迫られた。その課題に対するアプローチの違いが、屠龍と月光の違いを生み出した。

古峰文三「長距離戦闘機“屠龍&月光”誕生せり」

 迎撃戦闘機によって渡洋爆撃を行う陸攻隊に大きな損害を出していたという明確な課題に直面していた海軍は、戦闘機との格闘戦を早々に諦め、翼端援護機や米軍の銃装機のような役割を考えた。これを実現するために、背面に動力銃座を装備することが構想された。しかし、この動力銃座に振り回されて、出遅れ。とりあえず、陸上偵察機として運用されるが、これも、それほどスピードが速くない本機では難しく、より高速の爆撃機「銀河」の登場とその夜戦改造型「極光」の生産のために生産中止されてしまった。
 しかし、それと同時期に、斜め銃装備によって夜戦として復活、拠点や本土防空に活躍することになるのだが、消耗に対する補充が行われないまま消耗していき、彗星改造夜戦頼りになってしまった。なんか、不運感が漂うなあ。


 一方、陸軍はあくまで単発戦闘機とガチで格闘戦ができる飛行機が求められた。そうして出来上がった屠龍は、明野飛行学校での評価は散々だったが、南方侵攻作戦での長距離戦闘機として参謀本部によって装備化が進められ、開戦には間に合わなかったが、爆撃機の邀撃、襲撃機任務、本土防空戦での夜戦任務と活躍した。


 どちらも、見せ場を零戦と隼という長距離単発戦闘機に見せ場を奪われているというのが、これまたね。
 あとは、形になるまでの試行錯誤。欧米にモデルになる機種がなく、エンジンや機体の構造からも、格闘戦で単座機と互角に戦える機体を設計をするのは難しい。いろいろと難航した。また、高速で高い機体強度は、偵察機爆撃機としても利用できると、万能機としての性格も構想に入り込んでくる。

古峰文三「“屠龍&月光”の実力を評価する」

 月光は、最初から単座戦闘機との格闘は考慮していなかった。爆撃機編隊内で、自由に動いて防御火力を強化する。逆に、自機より鈍重な機体に対しては重武装で積極的に撃墜を狙うという機体だった。
 実機は、最高時速470-80キロ程度の速度で、かつ機敏にロールが打てない鈍重な飛行機であった。時速500キロで侵入してくるとみられたB-29は対処できないと考えられたが、現実には、なんとか斜め銃を撃てる位置に占位することができた。それより鈍重だった「極光」がどんなものだったのだろうなあ。
 あとは、海軍機として長大な航続力と洋上航法ができる乗員があったため、太平洋上で前進哨戒を行い、B-29編隊が中京か関東かを識別するような作戦もこなした。


 屠龍は、P-40には到底叶わない戦闘機だったが、双発機としては出色の運動性をもって、一方的にやられない程度には戦えた。ハリケーンバッファロー相手なら、互角以上に戦えた可能性が高い。しかし、開戦には間に合わず、最大の見せ場になったはずの舞台をのがしてしまった。
 重爆撃機邀撃用としては、20ミリ機関砲でも十分ではなく、武装強化された。37ミリ機関砲を積んだタイプは、レーダーと地上監視施設からの支援を受けて北九州方面では戦果をあげ得た。夜間戦闘機としては、とにかく数と要員が足りず、首都防空を海軍に依存せざるを得なかった。

宮崎賢治「世界の双発戦闘機カタログ」

 第二次世界大戦時の各国の双発戦闘機の紹介。双発戦闘機に求められるのは汎用性である、と。戦闘機相手に良いところのなかったBf-110でも、6000機生産されて、様々に運用されている。
 結局、単発戦闘機と互角に戦い得たのは、P-38だけなのか。そのP-38にしても、大航続力と十分な速度で対戦前半は活躍するが、大航続力の単発戦闘機が出現すると、置き換えられてしまう。まあ、その後も爆撃機として活躍できているのが、「汎用性」という奴なんだろうな。
 機体を絞りすぎたブリストル・ホワールウィンドは、結局、モノになっていない。


 航続距離と航法能力、そして、爆撃や偵察もできる汎用性が成功の元。
 その点で、6000機程度生産されたドイツのメッサーシュミットBf-110とイギリスのブリストル・ボーファイターが成功作、と。
 Bf-110は戦闘機色が強い機体だが、爆撃・攻撃任務で活躍し、夜間戦闘機として大戦を通じて活動。ボーファイターは戦後も運用された成功作。どちらかというと襲撃機任務に重点を置いた機体で、単座戦闘機との空戦は最初から考慮されていない。沿岸紹介と艦船攻撃、基地の攻撃、雷撃などいろいろとこなしている。
 結局、航続力が大きく、スピードも速く、運動性の良い双発機というのは、襲撃機に転用されちゃうわけね。

松田孝宏「猛鳥『屠龍』戦闘機隊バトルリポート」

 屠龍の戦歴。ドーリットル隊の捕捉失敗が初陣か。なんか、評判が良くないのは乗る側の不理解か、運用が悪いのか、飛行機がアレなのか。37ミリ機関砲ホ203と斜め銃の装備が成るまで、屠龍の戦闘力は限定的なモノであったということなのかねえ。
 1944年からは、その速度を活かして襲撃機として活用され、舟艇攻撃や空港の夜間襲撃に投入された。フィリピンをめぐる戦い、モロタイ島の空港襲撃やレイテ島をめぐる戦いでの空港や艦船攻撃。
 そして、最後の見せ場は本土防空。北九州方面では、地上の監視施設による早期察知によって大損害を与えることに成功する。関東方面の空襲では、損害を与えることに成功はしているものの…
 そして、沖縄戦の特攻、ソ連軍の機甲部隊の襲撃などで終戦まで戦い抜く。

坂口喜生「飛行第五戦隊『屠龍』大空の激闘」

 パイロットの回想記。ベテランパイロットが見る、屠龍。
 しかしまあ、名古屋大空襲で400機で爆撃してくるのに、迎撃する屠龍が30機では、対抗のしようがないよなあ。がっちり編隊を組んで相互防御する爆撃機を落とすのはきわめて難しい。
 機体強度の不足、B-29に対する上昇限度の不足、高高度での機関砲の作動油の凍結といった弱点があった。あとは、パイロットが寒さに苦しむ状況など。

吉野泰貴「斜銃の狩人『月光』太平洋&本土防空戦」

 月光の戦い。ラバウルニューギニアで、斜め銃装備の機体が戦果を上げて、夜間戦闘機化。しかし、むしろ、いろいろな任務に便利使いされた感じがあるなあ。昼間、迎撃の単発戦闘機を誘導する陸偵的な扱い、あるいはフィリピンやニューギニアでの魚雷艇狩り、索敵機としての運用、爆撃などなど。陸攻よりは便利使いできる飛行機ではあるか。
 レイテの魚雷艇攻撃で7隻ほどの撃沈を報じているけど、他サイトで調べると、航空攻撃で撃沈された魚雷艇って、少ないんだよなあ。
 あとは、本土防空戦の活躍。

美濃部正「私が指揮した『月光』部隊の新戦術」

 体験記。レイテでのグラマン撃墜のエピソード、デファイアントが初手だけ通用したのと同じ話だよなあ。

三茶甲士「現代の『戦車回収車』ワールドカタログ」

 自衛隊は、戦車が重くなるごとに、新しい回収車を導入していったのか。しかし、自重が50トンある90式戦車回収車、ほぼ同じ重さの90式戦車を引っ張って、足回りとか大丈夫なのだろうか。
 お国柄もおもしろい。アメリカ軍がM48系列の車体をベースにした車両を現在も使い続けている。ロシア東欧はT-72ベース、欧州は第三世代戦車をベース。
 クレーンの力量がイギリスだけ小さいのも印象的。あるいは、米軍はAフレームクレーンにこだわったり。

帆足孝治「米海軍ジェット戦闘機ヒストリー」

 FD-1ファントムからF-35ライトニングⅡまで。こうしてみると、40年代から60年代まではめまぐるしく機種が更新されるのに対して、それ以降は、F-4、F-14、F-18シリーズ、F-35と変化が緩やかになるな。10年から20年に一機種程度。
 FD-1ファントム、F2Dバンシー、F9Fパンサー/クーガー、F4Dスカイレイ、F3Hディーモン、F8Uクルーセイダー、F11Fタイガーなどなど。
 結局、F9Fシリーズが、直線翼後退翼両方で3000機以上生産されていて、これが米海軍の主力戦闘機だったのかな。「エリア88」に登場していない飛行機はいまいち印象が薄いw
 個人的には、F-8が割と好き。

石橋孝夫「日本海軍の仮装巡洋艦15」

 太平洋戦争中の仮装巡洋艦、報国丸と愛国丸のコンビによる開戦劈頭の通商破壊作戦、インド洋での報国丸の沈没、その後は輸送艦として運用され、護衛艦的な役割をやっていたことなど。

広田厚司「トラ退治の切り札IS-2スターリン重戦車」

 このクラスの戦車が4000両近く生産されているのが、ソ連のすごみというか。
 少なくとも、タイガー戦車と互角以上に戦える感じだな。まあ、連射が効かないとか、弾薬搭載量が少ないというのは、あまり戦車戦向けじゃない感じだけど。122ミリ砲という大口径砲は正義という感じだよなあ。