『集落が育てる設計図:アフリカ・インドネシアの住まい』

集落が育てる設計図 (LIXIL BOOKLET)

集落が育てる設計図 (LIXIL BOOKLET)

  • 作者:藤井 明
  • 発売日: 2012/12/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 うーむ、読書ノートが進まない。久しぶりに一冊処理。溜まってきたぞ…


 これ、著者は藤井明氏でいいのかな。LIXILギャラリーの企画展にあわせて刊行された図録的な本。
 建物や集落のプランというのは、同じような気候・環境で同じような材料を作って作られていても、共同体のアイデンティティを体現するものとして、意図的に他と違うデザインのものが作られる。そのモデルとして、泥を利用したアフリカのサハラ砂漠南縁のサバンナ地帯の親族集団による集落の個性的な姿、神話などの世界観を盛り込んで個性的な姿を見せるインドネシアの伝統的木造住宅が、それぞれバリエーション豊かに紹介される。


 アフリカサバンナ地域の泥の家がすごく印象的だな。
 個人用の小型住居を円形に並べていくグルマンチェ族の割とプレーンな家から、石壁の中に個人の住居が並ぶポドコ族の家、表紙にもなっている要塞的なタンベルマ族の住居や同様に固まり状のロビ族の家など。「外敵」といっても、組織的に攻撃されるのではなく、通りすがりの強盗は阻止できるといったところなのかねえ。タンベルマ族の住居とか、かっこよすぎる。
 あとは、土を筒状に積み上げて作った穀倉が印象的。ネズミなどの外部から荒らしに来る生物は避けられる。温度の調整も有利なのかな。一方で、内部でコクゾウムシでも発生した場合には無力のようだが。


 後半はインドネシアの住居。こちらも、木や竹という素材、そして、通風のための高床という共通性がありつつ、それぞれに個性的な姿の住居を作り上げている民族の来歴や神話的空間の再現といったアイデンティティの主張が明確にこめられているのが特徴。。同じ島に住んでいても、南では楕円状の家が建てられ、北では町家っぽい感じになるニアス島がおもしろい。
 スンバ族のとんがり屋根やアブイ族のピラミッド型住居は、むしろ、風に弱いという機能的な弱点を抱えつつ、共同体のアイデンティティの主張が優先されている。
 バリ島の伝統的住居は、ちょっと近代的な感じがする。トラジャの船型住居がかっこいい。


 住居は性能の問題だけではなく、民俗にも影響されるという話。


ja.wikipedia.org