岡崎武志『蔵書の苦しみ』

蔵書の苦しみ (光文社新書)

蔵書の苦しみ (光文社新書)

 以前から気になってた本。現在進行形で苦しんでいるので、思わず借りてきてしまった。なんというか、人間のリミットを試されるような話だなw
 私の現在の蔵書量が推定5000冊だけど、このくらいだとまだ大丈夫なんだな。とはいえ、私の場合、自室という収納可能場所が狭い問題があるわけだが…
 山ほど蔵書を持つ人の悲喜こもごもというか、苦闘を語る。ある程度以上になると、完全にコントロール不能になるんだよね。あと、やはり本棚に並べて、背表紙を見られるようにしておかないと、その本があるかどうかも分からなくなる。熊本地震から5年ぶりでラノベ文庫を全部引っ張り出したけど、こんな本持ってたっけみたいなのもあるしな。そして、そういう本は、思い切って処分した方が蔵書の新陳代謝としてよろしい、と。
 古書店とか、本を売る側に回ったマニアから話を聞いているのもおもしろい。


 もともとメルマガで連載した記事を加筆した物らしい。14話構成で、蔵書で床が抜ける話、蔵書の売却、書斎論、本棚の重要性、谷沢永一の蔵書と阪神大震災、蔵書を火災で失った人、本のためにデザインされた家、トランクルームを書庫にしている人の話、適切な蔵書の規模、コレクター意識、自炊と電子書籍、図書館、自分で蔵書を叩き売るといったエピソードが並ぶ。


 第一話は、本の重みで床が抜ける話。本当に崩落させた人いるんだな。軸組もおかしくなるだろうから、修理代がかさみそう。そして、建て付けが悪くなるなどの前兆がきっちりある、と。私も、一部屋に文庫と新書がほとんどとは言え、5000冊も詰めてるから、あんまり人ごとじゃない…


 第二話、第三話は、本の処分。古本屋さんからしても、どのくらいの本で、どんな本か、先に情報があるとうれしいという。本への姿勢も買い取り価格に影響するのか。こんまりじゃないけど、また読みたいと思わない本は思い切って処分する方が健全なんだろうな。再入手性を考えて、ラノベなんかも基本的には手放さない方針だったのだけど。容積的にどうしようもないし。


 第四話は書斎の話。明窓浄几が理想。あるいは、本を書く人なら、必要な本をまとめておける状況が理想的。家中増殖しているのは異常、と。第5話もそうだが、結局、本棚で背表紙が見える状態の本だけしか生きない。これは、ほんと、感じる。いまだにダンボールに詰めた本があちこち分散しているけど、何があるかも把握できなくなる。本棚設置で、ダンボール開けて、自分、こんなに本持ってたんだという気分だし…
 ちゃんと、背表紙が見えるようにしときましょうが教訓。


 第六章は谷沢永一の蔵書の話と阪神大震災で大崩壊した話。けっこう、本棚自体も値段がするものだから、そっちにコストかけるなら本買いたいが本音だよねえ。若い頃から、古本屋に入り浸って買い集めていたというが、その本を買うお金、どこから出てたんだろう。実家がお金あったのかな。
 そして、阪神大震災での惨状。全部本が散らばって、出入りできなくなった。大工さんに頼んで棚の修理と棚差しをやってもらって、その後、大規模な蔵書処分。千冊規模の処分だと、運び出す前に整理が必要なのか。
 いや、ほんと、本は地震に弱いからなあ。私も、熊本地震の本震では、こんな惨状に。昼間だったら、押しつぶされていたかもしれん。ベッド回りだけ、重量物が落ちてこないように配慮していたのが生きいたけど、後から見ると、ベッドの上にも本が滑り落ちてるんだよなあ。




 熊本地震後、熊本でも断捨離に走った人が多かったようだし、地震は蔵書整理の踏ん切りの機会なのかもね。私も、熊本地震直後に『ホビージャパン』誌10年分をはじめ、かなり処分したし。


 第七話は、災害つながりか、火災で蔵書を失った人の話。第二次世界大戦で焼いた人がけっこう多い。被害極限に分散とか、いろいろと工夫した話も。堀田善衛の戦後の火災で蔵書を焼いてしまった話が心に刺さる。他人の貴重な本を借りて、それを火災で焼いてしまったって、それは一番頭を抱える話だなあ。


 第九章のトランクルームを借りている人は、なんか買うために買ってる感じになっていて、最終的に自分が古本屋になっているという…


 第10話は、蔵書の規模の話。確かに、500冊くらいなら、全部、読んで身につけてるような感じだったよなあ。5000冊でも、なんかいまいち分からない本が交ざってるし。
 本を本当に持ってない作家なんてのも存在できるのだな。


 第11話は、コレクター心理。まあ、分からなくもないが、本に関しては、もうコレクター意識ないなあ。昔はラノベの関してコレクター意識があったけど、出版量がとんでもないことになって、あげくに、五六版に主戦場が移ってくるとね。
 観光マップとか、美術展のチラシが収集対象かな。このあたり、元手はかからないんだけど、整理に果てしなくコストがかかる…


 第12話は自炊の話。個人的には、基本的に本を壊すことに抵抗があるし、HDDが壊れたときが怖いし、なにより、目の前に物理的実態として存在しないと後回しにしまくる確信があるから、基本的に電子書籍は手を出さないんだよな。気兼ねなく積んどけるものは、際限なく積むだろ。
 マンガに関しては、スペースとの兼ね合いで、電書も導入かなあと思ってるけど。


 第13話は図書館。読むなら、借りるのも手だよね。貸出期限があると、否応もなく読むし。ただ、やっぱり図書館も定期的に処分したり、紛失があるから、仕事で重要な本とかは買わないと駄目だろうな。自分で知的生産をほとんど行わない私などには関係ない話だが。


 最後は、蔵書処分の最終手段一人古本市。もう、えいやと全部縁を切る覚悟がないとできない手段。あと、人脈があって、人の手当が付かないとどうしようもない様子。場所と輸送手段、店員と、なかなか大変。普通の人は、一箱古本市が身の丈に合ってるのかねえ。
 熊本地震とその後のリフォームで本を移動させるときに感じたけど、2リットルペットボトル6本のダンボールが、本を扱うときには収容能力と重さの兼ね合いとか、強度の関連で使い勝手が良い。やっぱり、みんなそうなるんだな。


 気になった本メモ:
荒俣宏『異都発掘:新東京物語
谷沢永一『紙つぶて』
谷沢永一『書物耽溺』
谷沢永一『雑書放蕩記』
山本善行『古本泣き笑い日記』
    『関西赤貧古本道』
長山靖生おたくの本懐:「集める」ことの叡智と冒険』