笹本祐一『星のパイロット 1-3』

 朝日ノベルズの新装版のほうを久しぶりに読破。いや、やっぱり好き勝手にメカを改造しまくってる場末の宇宙産業というのがいいなあ。


 第一巻はスタート編。ストーリーとしては、ハードレイクの宇宙産業スペースプランニングにやって来た新人宇宙飛行士、美紀の初飛行という単純なお話だけど、ディテールがいいよなあ。魔改造したコンベアB-58ハスラーに、スタークルーザー、何種類も飛んでるシャトル。往還機を使いこなすための訓練。そして、宇宙飛行の経験が無いことを告白したことから騒動からのジェットコースターシミュレーション。
 さらに上にあがってみれば、トラブルいろいろ。点検対象の通信衛星の軌道維持用燃料が想定より減っていたり、ウラン鉱床と期待される小惑星からのサンプルリターンに失敗したカプセル回収などなど。有人機をエアロブレーキングとか、現実には行政指導をくらいそうだなあ。


 しかし、美紀の実家お金持ちだよなあ。娘に宇宙飛行士資格とジェット機パイロット資格を取らせたあげく、旧式とは言え戦闘機を持ってるとか。つーか、美紀って何歳なんだろう。20代半ば?


 第二巻、第三巻は、彗星レースのお話。
 宇宙産業の大手企業が破綻。その企業が手がけていた、彗星を捕獲して、地球軌道に安定させ水資源として利用する計画は、最初に有人で彗星にたどり着いた企業のモノになることが決まった。大手が参入する中、スペースプランニングも成り行きで参加することに。
 とにかく、大手のような軌道上の拠点もない、自前の軌道宇宙船も持たない、ないないづくしの中、地上でジャンクヤードから部品を集めて、惑星間航行用宇宙船をでっち上げるのが楽しい。
 そして、いよいよ出発。地上からのクラッキング、別の彗星が残した彗星塵の帯に突入とトラブルが頻発。参加している船が彗星塵とクラッキングで航行不能になり、救援に向かうプシキャット。で、残った燃料でコアとなったダイナソアを発進させれば、トップを取れることが分かり。
 最貧宇宙船の勝利というのがいいなあ。


 第四巻は、文庫版の4巻、5巻を収録。
 前半は、前回手に入れたヴァルキリーを試験飛行しているところで、いきなり襲撃されたところに始まり、「資本主義の怪物」ジャガーノートと対決することになるお話。ネットワーク上で自律的に活動する人工知能のファンドの宇宙産業に手を伸ばしたブランチを、裏活動でぶん殴る、と。いくらアメリカでも、国内で戦闘機が飛び回ってたら、介入してきそうなものだけど…


 後半は、最終巻。機密の衛星からデータを盗んだら、大騒ぎになって。つーか、登場人物、みんな叩いたら埃が出そうな…


 というか、アメリカ軍の行動がいまいち理にかなってないような気がする。惑星間軌道上に巨大無人観測衛星を展開するという巨大事業をやって、最初に地球型惑星を見つけても、自力で開発できないなら意味がないと思うのだが。むしろ、よその探査活動を妨害するほうが確実なような。
 あと、下手に先住生物がいるような惑星だと、遺伝子汚染や未知の病原菌の問題が大きすぎて、逆に移住には適さないような気がする。そういえば、子供の頃、宇宙船の難破原因を描いた絵本というか、ビジュアル本を図書館で読んだことがあって、想像力がそっち方面に規制されているかもw