熊本県立美術館「細川コレクション:白隠と仙厓」後期展示

 全部の作品が入替えられているので、見に行く。梅雨時だから、油断しているとあっという間に会期が終わってたりするんだよな。今回は、前回の反省を活かしてメモを取ってる。メモの字が読み取れる内に記録。


 第一部は、白隠の作品が7点に、弟子が描いた頂相が展示。
 頂相の賛は白隠が書いた物だけど、なかなかすごいなあ。「この醜い坊主は、近ごろの形式化して因果の道理を追求しない禅僧を皆殺しにし、醜さの上にさらに醜さを加える」という意味の漢文だそうで。このあたり、現代美術というか、サブカル的なセンスに似たものを感じるな。


 後期展示では、単純な絵の評価として、仙厓より白隠の絵のほうがパワーがあるなと感じる。特に最初に並べて展示されている「達磨図」「蓮池観音像」「秋葉三尺坊像」がそれぞれ魅力的。これに「鍾馗水鏡図」が部屋の中心から見回して、目を奪われる。
 「達磨図」はさすがの迫力。「蓮池観音像」は黒の背景に蓮や観音を白抜きにしたのが印象的。「秋葉三尺坊像」は本体は不動明王みたいな感じで、狐に乗ってるのが修験道っぽいのかな。飯綱権現との関わり。
 人物の顔が豆のような縦型の輪郭に、ギロッと大きな目に上を向いた瞳が印象的だなあ。


 「寒山拾得図」は、「寒山詩」を褒める掛け軸の裏から寒山がのぞき込む構図がおもしろい。あと、「布袋図」の笑顔が胡散臭いというか、エロ親父感が。賛の「在青州作一領」「布衫重七斤」というのが、「あらゆる現象は一に帰結します。一はどこに帰結するのですか」、「私は青州で、麻のひとえの衣を仕立てた。重さ七斤」という問答に由来するらしい。あんまり理屈にのめり込みすぎるのも良くないみたいな境地らしい。




 第二部は仙厓義梵の作品。6点。
 「観音図」は、相当に省略した絵でも、しっかり観音図になっている。「大燈国師図」や「竹林七賢図」は、世間で評価が高い物をおちょくる意図が割とはっきりしているな。乞食修行をやっているところを描いた前者なんだけど、完全に乞食。しかも、鼻水をすごい勢いで飛ばしているあたり、下品系のギャグマンガっぽい発想だな。竹林七賢図もふんどしいっちょで相撲取ったり立ち小便と、とっても清談を行っているような状況ではない。というか、すんごく頭悪そう感がw
 「文殊菩薩図」、獅子に乗っている姿で描かれるものだが、その獅子の描写が。まだ、猫バスにまたがってる方が近い感。


 ラストは「禅画の動物たち」ということで、白隠と仙厓が描いた動物たち。白隠1点、仙厓4点。
 動物系は、やはり仙厓作品が印象深いな。
 「狗子仏性図」と「大隋和尚図」は、前者は犬に仏性はあるかという禅の重要課題についての議論、後者はメモしてないけどこちらも禅の議論中。なんだけど、犬を愛でる図、亀を愛でる図にしか見えない。
 「老子出関図」は、混乱する周から出て行くシーンを描いたもの。仙厓の作品にしては、牛がディフォルメされていない。しかし、がっくりと首を垂れている後ろ姿が、なんとも意気の上がらない感じを表現している。そして、なぜか後ろ向きに乗ってる老子
 ラストの「竜虎図」、ゆるい!
 龍が非常に弱々しくて、小雨しか降らせられなさそうな感じ。対する虎も、虎じゃなくて虎猫描いてるだろうという風情。