今和泉隆行『空想地図帳:架空のまちが描く世界のリアル』

 架空地図の地図帳。
 ネット上に架空地図を公開している人、結構いるんだな。そして、モデルにしている地図の形式も1万分の1地形図や昭文社のとか、20万分の1地勢図、道路地図、ネット地図と多様。
 ただ、見開きに掲載するだけだと、広さか解像度で不満が出るなあ。そちらはサイトを参照ということか。
 旧版地形図や土地利用図を模した地図も作っている凝った架空都市が印象深い。
 そういえば、11の成元市がすごく静岡市っぽい感じが。南にまっすぐな川が静岡県しかないとも言うが…
16の江戸時代の古地図や明治の民間地図を模した16笹羽市が好き。


 架空地図の歴史が興味深い。本居宣長が6枚の架空地図を残していて、系図とか関連データも作っていたというのが印象深い。こういうの、残らなくてもやっている人がたくさんいたんだろうな。
 ネットが普及して、架空地図趣味の人がネットで繋がるようになり、共有発表されるようになっていく。また、海外の架空地図趣味のGioFiction。さらに、都市再現シミュレーション「シムシティ」「A列車で行こう」「シティズ スカイライン」や物作りゲームマインクラフトといった3Dでの都市再現という動き。


 第二部は、著者が作成している架空都市、中村(なごむる)市を、地形や歴史に詳しい人の意見を聞いて修正していく過程。
 なんだけど、そもそも中村市の立地がおかしくないだろうか。一番の大河のほとり、地図内の堀水野のほうが城の立地に適当なように思えるのだが。前橋市あたりと同様に。
 他にもいろいろと気になるところはあるなあ。広善城の遺構があまりになくなりすぎとか、小規模な城なら防御力を稼ぐために山の上に作るんじゃとか、中心市街南側の練兵場、連隊規模の部隊が置かれたと思うがなんか不自然さを感じるとか。というか、3000人くらいの人間が寝起きする場所としてはスケールが小さいような。
 旭田地域、最初は古都という設定だったそうだが、大阪と京都みたいな距離感ではあるなあ。古代王朝か中世の王権が比較的コンパクトな施設でまかなえたと考えるなら、内陸の比較的外敵の影響がなさそうな場所に拠点を構えるというのはありかも。
 あんまり興味が無い都市計画編だけど、工業団地の土地割りのらしさとか、ニュータウンの道路のらしさという議論も興味深い。


 第三部は、現実の都市を引きながら、リアリティのある空想地図の作成講座。丁目界や道路網の経時変化、等高線の引き方などを、実際の地図などを用いて演習していく。
 使用ソフトの紹介が興味深い。ベクターデータのIllustratorが軽く作れる。あとは、レイヤー管理が情報を重ねる上で重要とか。他には、InkscapeMicrosoft Visio、AR_CAD、Affinity Designerなどが紹介される。
 とりあえず、ここを見ていて、私自身が区画整理とか耕地整理とかニュータウンが大嫌いなのを、改めて理解した。現在の状況を分析するならともかく、自分で創作してそういうモノを作りたくないというか。もともと、トールキンの中つ国の地図に触発されたのが原初衝動だから、近代都市というものに興味が無いんだよなあ。おかげで、第三部を読むのにえらく時間がかかってしまった。都合、一月ほどの時間がかかっている。


 空想地図関連サイト:
imgmap.chirijin.com
imgmap.chirijin.com
kitakami7kouren.jimdofree.com
souzoumap.menhera.io
mano1.myportfolio.com
ribe190.wixsite.com
sangoku-shizuoka.sakura.ne.jp
hiji.mosha2.jp
frommaps.com
ud-maps.net
shikasukeito.blogspot.com
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