杉浦貴美子『地図趣味。』

地図趣味。

地図趣味。

 地図をめぐるアレコレ。美大出身者だけに、色やデザイン経由で地図に興味をもったようだ。それだけに、視点が新鮮。カシミール3D経由で、地図のデザイン・作成もやっている人なのか。
 構成は、デザインがおもしろい地図を紹介する「偏愛地図コレクション」、地図のデザインに関わるようになった流れを書いた「地図をつくる」、地形を再現したお菓子作りなどの「食べられる地形、身につける地図」、地図と測量の科学館と地質標本館を訪れた「地図をたずねる〈つくば編〉」の4章。プラス、コラム。
 こういう言い方はアレなんだけど、目次をチェックしたときの印象よりは、おもしろかった。


 本居宣長の架空地図と架空の大名の話が興味深い。そんなものも作っていたんだ。架空地図って、楽しいけど、知識が増えれば増えるほど世界設定のタスクが大きくなって、手が出なくなるんだよな。どこまで、プレートテクトニクスなどの現実の地質構造を参考にするか。どこかで神様に任せるなら、神様がどこまでその世界に介入するかを設定しなくてはならなくなる。


 第2章は、著者が、地図に興味を持ち、実際に地図のデザインに関わるようになった過程。「色」への執着というのが、芸術系の人らしいなと。それに、街歩きも関わって、現状と。カシミール3Dの役割の大きさ。この人の製作した地図、私も見ているな。『東京「スリバチ」地形散歩』は読んだことある。
 カシミール3D、インストールしたままで、放りっぱなしなんだよなあ。私も、使えるようにならなくては。


 第3章は、お菓子やアクセサリーで、地図や地形を再現。地層ムースや等高線ケーキ、四色定理グミなど。その発想はなかった感が。


 最後は、つくば学園都市にある、国土地理院の「地図と測量の科学館」や産業技術総合研究所の「地質標本館」のレポ。
 ナショナルアトラス『日本国勢地図帳』『新版日本国勢地図』の話や図化機など過去の地図製作の体験が興味深い。あと、地質図の色は、担当者のフィーリングだとか。


 関連リンク:
地理空間情報ライブラリー ネット上で旧版地形図をきっちり見られるようにして欲しいなあ。
日本シームレス地質図
地質図Navi - 産総研