八緒あいら『「聖女など不要」と言われて怒った聖女が一週間祈ることをやめた結果→ 1』

 結局、教主のマッチポンプなのか。弱いものしかかからない幻惑魔法で、弱者を操って、次々と強者を陥れていくやり口が悪役らしい。で、アホなニックを操って封印を弱めて、聖女の存在感を強化し、王権を失墜。で、改めて聖女を操って自分がトップに立とうとするか。で、うまくいったと思った瞬間にバッサリ。爽快。


 聖女によって魔窟のモンスターたちが封印弱体化され、平和が保たれているスタングランド王国。しかし、平和になれ、聖女に対する信仰心は低下しつつあった。王位に野望を持つ王子ニックは、聖女を追放することでアピールしようと試みる。しかし、切れた聖女ルイーゼは7日間なにもなかったら、やめると賭けをもちかけて。
 案の定、魔物たちはだんだんと封印が解除され、元々持っていたポテンシャルを取り戻していく。4日目に騎士団が投入されるも、抑えられない。その日に国王による非常事態宣言とニック王子の失脚。


 一方、幽閉されたルイーゼは、世話係のミランダや監視役のアーヴィングといった人々と関係を深めていく。ミランダは、栄養状態の悪いルイーゼの状態を見て、療養モードに。一方、なかなか打ち解けないアーヴィングだが、実は幼い頃、彼女に救われ、命を削る「祈り」から解放される手段を模索していたが…


 最終的にモンスターの勢いは抑えられず、ルイーゼは祈りを再開して、事態を収めようとするが、スライムの特性を全て持つ「女王」の脅威にさらされる。アーヴィングとミランダの二人がかりで苦戦するが、抑えきり、祈りで弱体化したところをぽいっされる。
 最終的に、アホ王子ニックは処刑判決。さらに、黒幕たる教主クロードは、アーヴィングが仕掛けた引っかかりで幻惑魔法が解けたあげく、アーヴィングに腕を切られて引っ立てられることに。
 聖女研究所が作られ、聖女を解放する手段が模索される方向に。しかし、ルイーゼとアーヴィングの関係はこれから、と。


 とりあえず、一巻だけに、いろいろと語られない情報があるなあ。
 そもそも、巻き込まれ状況説明役の冒険者エリックとピアのカップルに、これからどんな役割が課されるのか。「情報屋」は英雄を育てようとしているようだが。S級冒険者キースとレイチェルの役割も気になるところ。


 あとは、聖女の役割というか、初代聖女がなんだったのかというのが大きな引きだな。ルイーゼは、たまたま王子の馬車の滑落という事故に直面して、初代聖女の記憶を引き継ぐ直前で儀式が終了。なにか、自動的にさせられることを避けられる、異例の聖女となっているようだが。
 そして、一度完全に封印が解除され、第三段階までしか封印できなくなった「魔窟」に封印されている存在は何か。
 国王のセリフが不穏だなあ。「聖女を囲い逃がさないための檻」、「人柱」ねえ。