櫻井みこと『婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!』

 陰謀の道具として使われるのを拒否して、自由を求めた令嬢の逃走劇。どこまでも利用しようとする親がアレだなあ。


 「聖女」に夢中になった王太子に婚約破棄されて、修道院に送り込まれた主人公サーラ。しかし、彼女は、むしろ、身勝手なカーティスから解放されて安堵していた。しかし、突然、カーティスが連日、修道院を謝罪に訪れるようになって、心の平安が失われてしまう。院長の計らいで隣町の孤児院に身を寄せるようになった彼女は、そこで、庶民の生活を経験しつつ、心の平安を得る。しかし、父親から手紙が来て、カーティスと結婚し、動向を見張るように要求された時に、自由を求めることを決意する。
 孤児院の雑用係の男性ルースに案内されながら、港町に向かい、そこから船に乗り国外へ。ルメロ王国で下船。陸路でティダ共和国へ向かい、そこで市民権を得て、母国と縁を切る計画。逃亡の旅の間に、互いを知り、関係が近づいていく二人。ルースが妹を守れなかった心の傷と、サーラを解放することで妹に出来なかったことをやろうという想い。選択していくということに慣れていくサーラ。


 ティダ共和国で定住権を得て、パン屋の店員の職を得て、順調にスタートを切るサーラ。しかし、カーティスがなにもかも捨てて追ってくる。自分の心情を説明して、カーティスを拒絶。ソリーア帝国の血縁者を頼って去って行くカーティス。
 しかし、ルースの妹の婚約者であった皇太子が皇帝に即位、さらに、ルースの妹が毒殺であったことが発覚し、帝国に向かうことにした二人。皇帝が、法律を超えて暴走しないように諫めにいく。


 主人公二人が最終的に結婚するのは、物語上当然だけど、婚約破棄をやった元王太子カーティスの復活劇がこの手の物語としては珍しいな。国王と第二王子が軽率な陰謀で失墜。逆に、カーティスは粘り強く貴族たちと話し合って、支持を高めていく。最初は自分勝手なアホ野郎だったわけだが。つーか、「聖女」を見捨てたところがホントアレ。