イセヤレキ『寡黙な悪役令嬢は寝言で本音を漏らす』

 ウェブ連載では、なにやらマニアックなプレイをやったり、淫らなアクセサリーを付けさせたりしているところが印象的だったけど、ずいぶん構成を変えてきたようだ。ウェブ版は全部読めてなかったんだけど、前の方の悪役令嬢回避のためのあれこれだの、闇と浄化の均衡を試みるあたりは書籍版の加筆なのかな。


 高熱で前世を思い出した主人公パウラは、悪役令嬢ルートを避けるために、ヒロイン覚醒の場に向かう。そこで、瘴気にあてられて声を失い、第一王子との婚約の話も流れる。声はすぐに戻ったが、その後引きこもって、ゲームの展開を避けていたら、喋るのが苦手な無表情令嬢に。
 そんななか、若き宰相オレゲールからの求婚をうけ、サクサクと結婚することに。
 寡黙な令嬢と仕事に忙しくて私生活がおろそかになりがちな宰相、すれ違いが起きそうな二人だが、寝ている時に話しかけると、パウラが本音を返してくれることが判明して、夫婦円満に。そりゃ、コミュニケーションギャップがなければ、もめないよなあ。
 無表情で、言葉がでないパウラさんだけど、内心はめちゃくちゃいじらしくて、そりゃ、本音を聞き出せたら、ベタ甘に成るよなあ。


 いろいろと仕事を丸投げされて、長時間労働が常態化していたオレゲール。しかし、パウラが待っているということで、だんだん仕事を効率化して、一緒に居る時間を作るように努力するように。
 途中、造園デザイナーの男に襲われかけたり、浄化の補助をする花の品種改良に成功して褒められたり、「魔王」と恋仲になった「ヒロイン」と友達になったり、「闇化」した魔性植物の資源化を画策したり。パウラさん、乙女ゲームの展開から逃げつつ、裏ではいろいろとやっていたんですねえ。


 ラストは、仕事が忙しくて入籍ですませたので、改めて新婚旅行と結婚式。ここいらあたりになると、イチャイチャ感がすごい。で、帰ってきたら懐妊。愛は増えるというところで幸せなラスト、と。


 カップルの関係が安定していて、非常に安心して読めた作品。