ぽよ子『好感度カンスト王子と転生令嬢による乙ゲースピンオフ 2』

 全二巻の後半。セラたん、なんでそんな簡単に死んでしまうのん編。


 物語構造がおもしろいよなあ。いかにもなんかありそうな前世持ち令嬢のセラフィーナが、実はずっと話を聞いているだけ。特に物語に一役買うこともなく、好き勝手しているだけという。その一方で、王太子は延々デスループセーブポイントなしを繰り返す羽目に。で、その経験をセラに話すという。
 というか、なんとなくナーロッパ舞台のシュタインズゲート感があるなあ。「世界線」はなくて、完全にやり直しだけど。


 お猿同然だった王太子が、徐々に知恵を付け、国宝の「石」を付け狙うシュターデン家とその背後のカルト集団を追い詰めていく。しかし、そこで今度はセラが、王太子の18歳の祝賀会の直後に殺害される。それも、シュターデンの残党と弟(最後の回では兄)に殺害されると原因がバラバラ。1回目のループでも、同じ日に落盤で死んでいる。
 セラが死ぬたびに、後追いしていた王太子。もう嫌だというところで、総決算の最後のループに入る。


 その後は、友人の公爵令嬢と王太子自身の回想。延々、王太子のセラのろけを聞かされる公爵令嬢がかわいそう。
 あとは、「石」の都合でセラが7年遅れで生まれてくるので、その間の王太子の焦燥。というか、死にかけるまで寝込むのね。そして、やっと再会できたセラを前にしたときの感無量感。セラが不審がっていた表情のクリス側からの内心。


 最後は結婚式からの「石」の呼び出し。「特異点の王子と異世界の娘」かあ。あと、セラの実家には、公爵令嬢のフェリシアさんが嫁入りとか。


 最後は、神と「石」の視点から見た物語。平和主義の集団に石を与えて、世界を管理させてた。で、あんまりアレな王子が出現して、国家や王家の存続、家族の幸せという願いが果たされなくなって、詰まって、何度やり直してもうまく行かない。
 そこで、王子の興味を引きそうな個性的な娘を、地球から導入。1周目の展開を乙女ゲーム的に脚色して、ゲームデザイナーの脳に注入。で、めちゃくちゃ王子をディスってた娘をお持ち帰り。
 しかし、世界に排除されて、17歳で死んでしまうため、年齢を下げに下げて、身近な人に殺されない年齢差が7歳だった、と。


 番外編は、1周目でヒロインポジションだったフィオリーナの家に送られた密偵のお話。後半、スローライフエンジョイ勢だった密偵さんが、幸せカントリーライフな報告書を送っていた理由というか、気遣いがいいなあ。