由畝啓『悪役令嬢はしゃべりません 1:覚醒した天才少女と失われたはずの駒』

 三つ巴の勢力が争うなかで、どちらも微妙な立場の子供というヒーローとヒロインの情報格差がおもしろい。一歩一歩、生き残りのための足場を固めていく。
 悪役令嬢たるリリアナは、父親は口では勧めながら、態度では婚約を解消させる意志を示すというダブルディバイド。さらに、駒として蔑ろに扱われている状況。その中で、呪いをかけられてしゃべれなくされて、代わりに前世の記憶を入手する。身を守るために、無詠唱魔術を手に入れ、さらに、リリアナの兄の誕生パーティに赴く際に護衛として付けられた魔導士から指導を受けて研鑽する。
 スタンピードに襲われて、光魔法で浄化しまくったり。魔法省の副長官と協力して、スタンピードの原因を探ったり。誘拐犯を秘密裏に捕縛したり。裏で大活躍しまくりのリリアナさん。
 それだけに、裏の情報が得られる人間には狙われまくりという。


 国王派に、アルカシア派に、大公派の三つ巴に、中立派だの、皇国派だの、辺境伯だの、様々な勢力が動き回っていて、どう展開するのか。
 父王が病床で不安定な王太子はどう動くのか。「賢王」と呼ばれる祖父を尊敬し、目標としていたが、実は承認欲求モンスターで自分の権力を維持するために最後まで後継者を定めず、結果、様々な情報が失伝してしまっていると知り、足元が崩れ去るような思いをしているとか。


 あとは、思わせぶりに出てくる暗殺者の少年がどう動いてくるのか。「大禍の一族」とはなんぞやとか。
 今のところ、情報をまいたところか。