インドの航空会社はちょっと怖い

ここのところ騒ぎになっている耐震偽装問題の教訓のひとつは、「安いものにはワケがある」だろう。そのような意味で、インドの航空会社の運賃の安さは恐ろしさを感じるレベルである。
週刊ダイヤモンド』誌の2005年9月17日号の記事『四〇〇円で飛行機に乗れる!インド国内線「仁義なき戦い」』によれば、デリー・ムンバイ間(おおよそ東京・福岡間と同じくらいの距離)のバーゲン価格が「スパイス・ジェット」社372円、「エア・デカン」社1250円だそうだ。
これがバーゲン価格で客単価はもっと高くなることは分かっているが、それにしても安すぎる。旅客機にかかる諸経費、航空燃料・交換用部品・技術者の賃金などは、国際価格があり、インドでもそれほど低くはならないはずである。
そもそも、低価格エアラインは、最近のインドネシアでの墜落事故が記憶に新しいように、事故の危険性が高い。価格を下げるには、客から見えにくい、安全対策の部分を削るのが一番手っ取り早い。アメリカでも、低価格エアラインの走りである、バリュー・ジェットが事故を頻発させた。
週刊ダイヤモンドの記者は、

とまれ、利用者にとっては朗報である。… 料金が安くなれば、確実に新しい客層を開することはできる。

とのほほんと書いているが、いつかは必ず炸裂する爆弾を目の当たりにしているようで正直、気分が悪い。


で、航空機事故のデータベースが充実している外山智士ホームページを調べてみると、2000年にアライアンス航空機が墜落事故を起こしている他は、インディアン航空(エア・インディアかインディアン。エアラインズかは不明)が1988年から1994年にかけて5件の事故を引き起こしているのが目立つ程度で、危なげなスパイス・ジェットやエア・デカンの名前はない(事故発生国別検索)。


この手の航空会社が事故を起こしていないわけがないという偏見のもとにさらに調べてみると、インドでは、今年に入ってエアラインの規制緩和が行われて、新規参入の航空会社が多数運行を開始している(参照:Aviation Now)。
エア・デカンが二年前、今年に入ってからはキングフィッシャー、スパイス・ジェット、ゴーエアなどが相次ぎ運行を開始しているようだ。
今のところ各航空会社の極端な安売り運賃は、しばらく前に日本の携帯電話会社やYAHOO BBがやっていたような顧客囲い込み戦略のようだ。会社も新しいし、今年、来年前半あたりまでに重大な事故はないかなーという気がする(弱気)。事故を起こすとしたら、新規参入組の攻勢に苦しむ国営航空会社のエア・インディアやインディアン・エアラインズの方だろう。
しかし、2〜3年後は危ないのではないだろうか。
Aviation Nowでは、

こうして今、インド航空界は急膨張をつづけている。エアバス社の予測では、向こう20年間に570機の航空機が導入されるだろうという。このうち20機はA380、179機は中型ワイドボディ機、371機は単通路機という内訳である。

とあるように、急拡大のツケが顕在化しそうな気がする。運行する人員はそう簡単には確保できない。導入した機体も傷みはじめる。
いつ大事故が起きるものやら。
インドでは、おそらく保障も日本の相場と比べて安くなるだろう。日本人がインドの航空会社を利用するときは、十分注意したほうがいいのではないか。少なくとも私は乗りたくない。