新書のノート

  • 原田信男『コメを選んだ日本の歴史』

コメを選んだ日本の歴史 (文春新書)

コメを選んだ日本の歴史 (文春新書)

全然だめ。
コメの高い交換価値、富の指標としての意義が視野から外れているために、歴史の原動力としてのコメの力がまったくブラックボックスになってしまっている。
本書でも指摘されているように、古代・中世の水田稲作は不安定であり、必ずしも生存のために有利とはいえない。服部英雄が、『武士と荘園支配』か『土地と在地の世界をさぐる』で、「3日雨が降らないと水不足の懸念があった」と述べている(引用は不正確)がし、本書でも、稲作が畑作に比べて有利とは言えないことは指摘されている。
水利施設や水田などコストが必要で、かつ順調に育ちにくい(生産性の低い)稲が、なぜ重視されるのか。その力の起源が全く捉えきれていない。
また、それと関連して、コメの聖性が失われ、食料になってしまう時期がいつかも分からない。それが、現在の農業問題の根底のひとつなのだが。
結局のところ、物質貨幣としてのコメという性格に眼をつぶってしまったために、コメイデオロギーの再生産しかできなかった書物。

15世紀の黄金時代を中心にした、ブリュージュ(ブリュッへ)の通史。手軽に読める通史はありがたい。
商業だけではなく、都市の景観・儀礼ブリュージュでうみだされた芸術などにも目配りしてあり、口絵に多数のカラー写真が収録してあるのも素晴らしい。

日本史の一級史料 (光文社新書)

日本史の一級史料 (光文社新書)

史料をめぐるエッセイなのかな?
どのような史料を、どのように扱ったかが解説してある。紹介されている史料が面白い。
東京にいると言うことは、史料を扱う上で恵まれているな。
日本史の史料を読むことには昔から興味があるのだが、あのくずし字がぜんぜん分からないのが壁。