近藤和彦『イギリス史10講』

イギリス史10講 (岩波新書)

イギリス史10講 (岩波新書)

 10章にわけて、イギリスの歴史を紹介する通史。あとがきにも書かれているが、この紙幅で、一国の通史を書くとなれば、大胆なアレンジが必要になる。本書では、言語やアイデンティティ、政治社会にフォーカスして、現在の国制に至る流れを描いている。イングランドスコットランドアイルランドといったブリテン諸島の諸王国の形成。統治の正当性の根拠として血統・議会の合意・国教会の意向という三要素が近世以降の国家の安定に際して重要であり、場合によっては血統はそれほど重視されなかったという指摘も興味深い。この三要素が合致したときは政治的に安定し、これが損なわれると革命が起きる。
 一方で、政治的に弱い階層に対する残酷さというのも、特筆すべきだと思うが。たとえば産業革命期の囲い込みのような事態は、むしろ大陸ヨーロッパでは起きていないわけで。民間公共社会はイギリスの特徴ではあるが、一方で民間の寄付による福祉や学校の運営は、「救いたい対象」しか救わないという側面もあるのではないだろうか。教育や医療の分野で、イギリスの制度は非常に貧弱であり、上下の階層の間に走る深い亀裂は、本書からは読みとれないよなあと。まあ、難癖に近い感想ではあるが。


 百年戦争の後にイギリスやフランスは国家の輪郭を作ってきたこと。近世の礫岩国家。あるいは「名誉革命」がイングランドでは無血革命であったが、スコットランドアイルランドでは激しい流血の革命であったこと。また、17世紀を通じてフランスと友好的な関係であったが、この革命を機会に、反フランス側に転じる、国際的に大きな意味を持つものであったこと。オランダにとって有利なものであったと。
 戦後、企業の国有化など、非常に社会主義的な政策が行われたとか、サッチャーによる亀裂とか。戦後に企業を国有化しまくったのは、後々負担になった感が強いよなあ。技術に対する投資がおろそかにされたというか。
 風邪引きかけて、先延ばしにして、読後一週間ほどたったせいか、内容を忘れかけているな…