シルクロード学研究センター編『シルクロード学の提唱』

シルクロード学の提唱

シルクロード学の提唱

 シルクロードをめぐる、同研究所長の樋口隆康氏と各分野の研究者の対談集。対談集だけに読みやすい。90年代半ばに買って、一度読んだものの再読。そう言えば、これ買った当時は結構苦労しながら読んだ記憶が…
 ちなみに→シルクロード学研究センター
昨年度末をもって廃止になったそうだ。所長の樋口氏は同時に奈良県橿原考古学研究所も退任している。同氏の個人的な力で維持されていた組織だったのだろう。


 内容は、リモートセンシング・思想の交流・遊牧民・工芸品の交流などをめぐる対談。
 個人的に印象的なのは、第二章の「思想と仏教」の仏教を巡る話。仏教が社会にコミットしない、地元の慣習に融通無碍に染まっていく宗教であるという指摘が興味深い。出家信者はともかく、在家信者にはほとんど何も要求しない「原理なき宗教」だそうな。だからこそ、日本でも神仏習合なんて荒業が可能だったわけだが。
 あとは、リモートセンシング、ガラス、絹織物が面白かった。
 『西欧低地諸邦毛織物工業史』や『日本近代技術の形成』を読んで思ったが、織物って真面目にやろうとすると、かなり複雑な技術で、なかなか難しい。