松本典昭『パトロンたちのルネサンス:フィレンツェ芸術の舞台裏』

パトロンたちのルネサンス―フィレンツェ美術の舞台裏 (NHKブックス)

パトロンたちのルネサンス―フィレンツェ美術の舞台裏 (NHKブックス)

 題名から分かる通り、ルネサンスの時代の美術品がどのように発注されたのか、芸術家たちの待遇はどのようなものだったのかを明らかにする、通史。フィレンツェルネサンス芸術が花開いた15世紀からメディチ家トスカナ大公国の君主になる16世紀前半辺りまでを取り上げる。
 同職組合から商人=貴族たちの個人的パトロネージへの変遷。メディチ家の支配の進展に伴う、性格の変化などが、時代を追って語られる。芸術家たちが、職人階級の扱いでそれほど報酬を受け取っていないことや、美術品の財産としての評価の低さ(p.128)あたりも興味深い。
 本書でも指摘されているが、現在の芸術の貧しさというのは、こういういろいろなしがらみを、というかいろいろな関係を失ったのが原因だろうなと思った。写真に、いろいろな機能を奪われてしまったせいもあるのだろうが…